低用量アスピリンの1次および2次予防のベネフィット:ATT

提供元:ケアネット

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公開日:2009/06/11

 



低用量アスピリンの1次予防および2次予防のベネフィットに関して、抗血栓療法に関する国際共同研究グループATT(Antithrombotic Trialists')コラボレーションによるメタ解析の結果が、Lancet誌2009年5月30日号にて報告された。いまだ明確になっていない1次予防に関して、「価値が認められるとの確証は得られなかった」と結論。ただし断定を避け、「さらなる試験が進行中」と結んでいる。

1次予防の効果はクリアにはならなかった




メタ解析は、重篤な血管イベント(心筋梗塞、脳卒中、血管疾患の死亡)と主要な出血イベントに関して、1次予防に関しては6試験(低リスクを有する95,000人が参加、計66万人年、重篤な血管イベント3,554例)、2次予防に関しては16試験(高リスクを有する17,000人が参加、計43,000人年、重篤な血管イベント3,306例)で行われた。

本論では、予定された治療期間中に起きた初回イベントintention-to-treat解析の結果が報告されている。

1次予防に関する試験解析では、重篤な血管イベントの発生についてアスピリン群に、12%の比例的減少が見られた(年間発生率のアスピリン群vs. 対照群:0.51% vs. 0.57%、p=0.0001)。

その主な要因は、非致死的心筋梗塞で見られた約5分の1の減少による(0.18% vs. 0.23%、p<0.0001)。

脳卒中に関しては有意な効果は確認できなかった(0.20% vs. 0.21%、p=0.4)。出血性脳卒中については0.04% vs. 0.03%、p=0.05、他の脳卒中については0.16% vs. 0.18%、p=0.08となっている。

血管疾患の死亡についても、有意差は認められなかった(0.19% vs. 0.19%、p=0.7)。

出血イベントに関しては、アスピリン群で、重大な胃腸出血と頭蓋外出血が増大しており(0.10% vs. 0.07%、p<0.0001)、冠動脈疾患の主なリスクファクターが、それら出血イベントのリスクファクターともなっていた。

2次予防についてはアスピリン群に絶対的減少が見られた




2次予防に関する試験解析では、重篤な血管イベントの発生について、アスピリン群に、より大きな絶対的減少が見られた(6.7% vs. 8.2%、p<0.0001)。

その主な要因は、脳卒中全体(2.08% vs. 2.54%、p=0.002)および冠動脈イベント(4.3% vs. 5.3%、p<0.0001)に関してそれぞれ見られた約5分の1の減少が大きい。ただし、脳卒中に関して、出血性脳卒中についてだけ見てみると有意な差は見られなかった。

また、1次予防、2次予防に関する試験において、すべての重篤な血管イベントの発生の比例的減少に、男女差はなかったという。