上皮成長因子受容体(EGFR)遺伝子の変異を有する進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療では、現在、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が標準治療であるが、獲得耐性は避けられず、EGFR-TKIの投与中に病勢が進行した患者は、耐性のメカニズムが不均一か不明であるため治療選択肢が限られている。中国・中山大学がんセンターのWenfeng Fang氏らHARMONi-A Study Investigatorsは「HARMONi-A試験」において、EGFR-TKI療法後のEGFR変異陽性NSCLC患者では、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)と血管内皮増殖因子(VEGF)の二重特異性抗体であるivonescimabと化学療法の併用は、化学療法単独と比較して、許容範囲内の安全性プロファイルを保持しつつ、全生存期間(OS)の統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善をもたらすことを示した。本研究の成果は、JAMA誌オンライン版2026年6月17日号で報告された。
中国の無作為化プラセボ対照比較第III相試験
HARMONi-A試験は、中国の55施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照比較第III相試験(Akeso Biopharmaの助成を受けた)。
2022年1月25日~11月2日に、局所進行または転移のある非扁平上皮NSCLCで
EGFR変異陽性と確認され、(1)第1または第2世代EGFR-TKI治療後に
EGFR T790M変異陰性が確認された患者、または(2)第3世代EGFR-TKIを1次または2次治療として受けた患者を登録した。
被験者322例(年齢中央値59.4歳、女性51.6%)を、3週を1サイクルとし、1日目にivonescimab 20mg/kgを静脈内投与する群(161例)またはプラセボ群(161例)に無作為に割り付けた。全例に、ペメトレキセド+カルボプラチンによる化学療法を行った。これを4サイクル施行後、それぞれivonescimab+ペメトレキセドまたはプラセボ+ペメトレキセドによる維持療法を行った。
主要評価項目は無増悪生存期間(PFS)であり、すでに中間解析の結果(ハザード比[HR]:0.46、p<0.001、中央値の群間差:2.3ヵ月)が報告されている。今回は、中間解析時から25ヵ月の追跡期間を経た時点での主な副次評価項目であるOSのデータが公表された。
OS中央値はivonescimab群16.8ヵ月、プラセボ群14.1ヵ月
ベースラインにおいて、ivonescimab群の35例(21.7%)とプラセボ群の37例(23.0%)が脳転移を有していた。それぞれ139例(86.3%)と137例(85.1%)に、第3世代EGFR-TKIによる治療歴があった。追跡期間中央値は32.5ヵ月だった。
OS中央値は、プラセボ群14.1ヵ月に対し、ivonescimab群は16.8ヵ月と2.7ヵ月有意に長かった(層別HR:0.74、95%信頼区間[CI]:0.58~0.95、p=0.02)。
24ヵ月時のOS率は、ivonescimab群35.3%、プラセボ群28.8%であり、30ヵ月OS率は、それぞれ29.1%および18.4%であった。
また、ベースラインの脳転移の有無を問わず、ivonescimab群で生存に関する明確な有益性を認めた(脳転移ありHR:0.61[95%CI:0.37~1.03]、脳転移なしHR:0.77[95%CI:0.58~1.03])。
安全性プロファイルは中間解析とほぼ一致
ivonescimab+化学療法の安全性プロファイルは、中間解析の結果や、化学療法、PD-1阻害薬、VEGF阻害薬の既知の毒性作用とほぼ一致していた。治療期間中に発生したGrade3以上の有害事象(67.1%vs.54.7%)およびGrade3以上の治療関連有害事象(59.6%vs.44.7%)は、プラセボ群よりivonescimab群で頻度が高かった。
治療期間中に発生した有害事象による治療中止は、ivonescimab群で11.8%、プラセボ群で8.1%に認められた。また、免疫関連有害事象はivonescimab群で多かった(29.2%vs.8.1%)が、免疫関連有害事象による治療中止はまれであり、両群間で同率だった(各1.2%)。
著者は、「ivonescimabによるOS中央値の改善は2.7ヵ月とわずかではあるが、2つの群の生存曲線はとくに後期の時点で大きく乖離し、30ヵ月時のOS率には10.7%ポイントの差を認めた」「これらの所見は、PD-1とVEGFの二重阻害と化学療法の併用が有効な治療戦略であることを立証するとともに、本研究の対象となった患者群において、ivonescimabと化学療法の併用が新たな治療選択肢となりうることを示すものである」としている。
(医学ライター 菅野 守)