成人のクレードIIエムポックスウイルス感染者において、p37エンベロープタンパク質を標的とする抗ウイルス薬テコビリマトは、プラセボと比較して臨床的回復までの期間を短縮せず、疼痛の軽減やウイルス除去の促進にも寄与しないことが、米国・コロンビア大学アービング医療センターのJason Zucker氏らSTOMP/A5418 Investigatorsが行った「STOMP/A5418試験」で示された。テコビリマトは、天然痘の治療薬として米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ているが、前臨床試験などの結果に基づきエムポックスの治療薬候補として注目を集めていた。研究の成果は、NEJM誌2026年2月26日号で発表された。
7ヵ国の無作為化プラセボ対照第III相試験
STOMP/A5418試験は、日本を含む7ヵ国の49施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第III相試験(米国国立アレルギー感染症研究所[NIAID]の助成を受けた)。2022年9月~2024年10月に、年齢18歳以上、検査で確認されたクレードIIエムポックスウイルス感染者344例(年齢中央値34歳[四分位範囲[IQR]:28~40]、男性339例[99%])を登録した。
被験者は、テコビリマト(232例)またはプラセボ(112例)を、14日間経口投与する群に無作為に割り付けられた。
主要アウトカムは、time-to-event解析で評価した臨床的回復とし、すべての皮膚病変がかさぶたを形成し落屑して治癒に至り、すべての肉眼的な粘膜病変が治癒するまでの期間と定義した。
主要・副次アウトカムに差はない
336例が活動性の皮膚または粘膜病変を有しており、主解析の対象となった。症状発現から試験登録までの日数中央値は8日(IQR:6~10)、登録時の病変数中央値は9個(IQR:4~18)であった。122例(35%)が直腸炎を、116例(34%)が重度の疼痛を有しており、HIV陽性の337例のうち117例(35%)が「HIVと共に生きる(living with HIV)」の状態で、78例(23%)は少なくとも1回の天然痘またはエムポックスワクチンの接種を受けていた。
29日目までの、臨床的回復の推定累積達成率は、テコビリマト群が83%、プラセボ群は84%であった。臨床的回復の競合リスクハザード比(HR)は0.98(95%信頼区間[CI]:0.74~1.31)であり、両群間に有意な差を認めなかった(p=0.89)。
副次アウトカムについては、ベースラインで重度疼痛を有していた患者における5日間の治療後の疼痛強度の軽減(群間差:0.1ポイント、95%CI:-0.8~1.0)、29日目までの病変の完全治癒(競合リスクHR:0.97、95%CI:0.75~1.26)、皮膚病変分泌物中のウイルスDNA消失(8日目の群間差:12%ポイント[95%CI:-2~26]、15日目の群間差:1%ポイント[95%CI:-10~13])のいずれにも、両群間に有意な差はなかった。
Grade3以上の有害事象:4%vs.3%
Grade3以上の有害事象は、テコビリマト群で4%(12/275例)、プラセボ群で3%(4/136例)に発現し、両群間に実質的な差はみられなかった(群間差:1%ポイント、95%CI:−5~5)。重篤な有害事象はそれぞれ6例(2%)および2例(1%)に発生した。死亡例の報告はなかった。
著者は、「本研究の結果は、クレードIエムポックスを対象としたPALM007試験の知見と一致する。これらの知見を統合すると、テコビリマトはクレードIおよびIIエムポックスに対する臨床的有効性を欠くことが示唆され、エムポックス治療のための治験薬を評価する無作為化対照比較試験の必要性を強調すべき状況にあると考えられる」としている。
(医学ライター 菅野 守)