雪崩遭難者の窒息を新たな携帯型安全装置が防ぐ/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2025/10/20

 

 雪山で雪崩に巻き込まれ埋没すると通常35分以内に窒息死に至り、適時な救助が不可能となる場合が多い。生存率向上のため窒息を遅らせる新たな戦略の開発が求められている中、イタリア・Eurac ResearchのFrederik Eisendle氏らは、酸素補給やマウスピースを必要とせず、雪崩によって堆積した雪(デブリ)から遭難者の気道へ空気を送り込む新たな携帯型雪崩安全装置の有効性を、介入的無作為化二重盲検臨床試験で調べた。模擬埋没の間、致命的となる低酸素血症や高炭酸ガス血症を遅延させたことが示されたという。JAMA誌オンライン版2025年10月8日号掲載の報告。

無作為化試験で、50cm以上の雪に覆われた状態の雪崩シミュレーションを受け評価

 試験は2023年1月~3月に、イタリアの4機関で組織され1地点で実施された。18~60歳の健康なボランティアが登録された。

 被験者は、安全装置群(Safeback SBXを使用)または対照群(シャム装置使用)に無作為に割り付けられ、うつ伏せで50cm以上の雪に覆われた状態の、命の危険がある雪崩シミュレーションを受けた。Safeback SBXはノルウェー・Safeback SEの製品で、欧州連合(EU)においてレベルIIの個人用保護具として分類されている。

 安全装置群では、35分経過後も埋没状態だった被験者は直ちにシャム装置群に移行し、非盲検対照フェーズを完了した。シミュレーション中、被験者の安全確保と生理学的データを集めるためにバイタルパラメーターが継続モニタリングされた。

 主要アウトカムは、介入群と対照群を比較した、35分間のモニタリング中の、パルスオキシメーターで測定した酸素飽和度(SpO2)が80%未満(イベント)になるまでの時間。副次アウトカムは、雪の中での異なる距離(エアポケットからエアポケットまたはバックパックの空気排出口までが25cmまたは50cm)での酸素濃度や二酸化炭素濃度などであった。

SpO2が80%未満になったことにより試験終了となるリスクが有意に低下

 36例が無作為化され、24例が試験を完了し最終解析に含まれた。被験者は年齢中央値27(四分位範囲[IQR]:25~32)歳、13例(54%)が男性であった。

 安全装置群では、埋没時間中央値35.0(IQR:35.0~35.0)分においてイベントの報告はなかった。対照群では埋没時間中央値6.4(4.8~13.5)分において7件のイベントが報告された。

 安全装置群は、SpO2が80%未満になったことにより試験終了となるリスクが有意に低かった(log-rank・Breslow検定によるp<0.001)。

 安全装置群と対照群の同一ポイントにおいて、エアポケット内の二酸化炭素濃度は1.3%(95%信頼区間:1.0~1.6)vs.6.1%(5.1~7.1)であり、酸素濃度は19.8%(19.5~20.1)vs.12.4%(11.2~13.5)であった。

(ケアネット)