英国・ケンブリッジ大学のW Keith Tan氏らDELTA consortiumは、食道全体から細胞を採取するデバイス(カプセルスポンジ)とバイオマーカーを組み合わせて、患者を3つのリスク群に層別化する検査法を開発し、英国の13施設にて2つの多施設前向きプラグマティック実装試験の一部として評価した結果、このリスク分類に基づく低リスクのバレット食道患者の経過観察では、内視鏡検査の代わりにカプセルスポンジを使用可能であることを明らかにした。内視鏡検査による経過観察はバレット食道の臨床標準であるが、その有効性は一貫していなかった。Lancet誌オンライン版2025年6月23日号掲載の報告。
臨床・カプセルスポンジいずれも陰性を低リスク群と定義
研究グループは、integrateD diagnostic solution for EarLy deTection of oesophageal cAncer (DELTA)研究およびNHSイングランド(National Health Service England[NHSE])の実装パイロット研究に参加した、非異形成バレット食道と診断され英国のガイドラインに従って経過観察を受けている18歳以上の連続症例を対象に、カプセルスポンジ検査を実施した。
採取したすべての検体はISO-15189認定検査施設にて中央評価し、年齢・性別・バレット食道長に基づく臨床バイオマーカーと、カプセルスポンジバイオマーカー(HE染色[正常、異形成、意義不明の異型]、ならびにp53染色[正常、不明瞭、過剰発現])に基づき、低リスク(両バイオマーカー陰性)、中リスク(臨床バイオマーカー陽性、カプセルスポンジバイオマーカー陰性)、高リスク(臨床バイオマーカーに関係なくカプセルスポンジバイオマーカー陽性[異形成またはp53過剰発現、あるいはその両方])に分類した。
主要アウトカムは、各リスク分類群における、治療を要する高度異形成またはがんの診断とした。
低リスク群の高度異形成またはがんの有病率は0.4%
2020年8月~2024年12月に910例が登録された(DELTA研究505例、NHSE研究405例)。910例のうち138例(15%)が高リスク、283例(31%)が中リスク、489例(54%)が低リスクであった。
高リスク群において、あらゆる異形成またはがんの陽性的中率は37.7%(95%信頼区間[CI]:29.7~46.4)であった。高リスク群の中でも腺異型とp53異常の両方を有する集団は、高度異形成またはがんのリスクが最も高かった(低リスク群に対する相対リスク:135.8、95%CI:32.7~564.0)。
低リスク群における高度異形成またはがんの有病率は0.4%(95%CI:0.1~1.6)であり、あらゆる異形成またはがんの陰性的中率は97.8%(95%CI:95.9~98.8)、高度異形成またはがんの陰性的中率は99.6%(98.4~99.9)であった。
DELTA研究コホートにて機械学習アルゴリズムをテストしたところ、デジタル病理ワークフローの一環として機械学習アルゴリズムを用いることでp53病理診断を要する症例の割合を32%にまで減少させることができ、かつ陽性症例の見逃しはなかったことが示された。
(ケアネット)