妊娠30週0日~33週6日の切迫早産の治療として、子宮収縮抑制薬atosibanは新生児のアウトカム改善に関して、プラセボに対する優越性を示さなかった。オランダ・アムステルダム大学のLarissa I van der Windt氏らAPOSTEL 8 Study Groupが、国際多施設共同無作為化比較試験「APOSTEL 8試験」の結果を報告した。オキシトシン受容体拮抗薬のatosibanは、切迫早産の特異的な治療薬として欧州などで承認済みの子宮収縮抑制薬である。子宮収縮抑制薬は、国際ガイドラインで切迫早産の治療薬として推奨されており、出産を遅延することが示されているが、新生児アウトカムへのベネフィットは明らかにされていなかった。著者は、「子宮収縮抑制薬の主目的は新生児のアウトカム改善でなければならない。今回の結果は、妊娠30週0日~33週6日の切迫早産の治療薬としてatosibanを標準使用することに対して疑問を投じるものであった」と述べ、「われわれの試験結果は、国ごとの実践のばらつきを減らし、切迫早産の患者に対するエビデンスベースの治療提供に寄与するものになるだろう」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年3月3日号掲載の報告。
妊娠30週0日~33週6日の切迫早産に投与、新生児の周産期死亡と6疾患を評価
APOSTEL 8試験は、オランダ、イングランド、アイルランドの26病院で行われ、妊娠30週0日~33週6日の切迫早産における子宮収縮抑制薬atosibanの新生児疾患および死亡の改善に関して、プラセボに対する優越性を評価した。
妊娠30週0日~33週6日の切迫早産を有する18歳以上の単胎または双胎妊娠の女性(インフォームド・コンセントに署名済み)を、atosiban群またはプラセボ群に無作為に1対1の割合で割り付けた(施設ごとに層別化)。
主要アウトカムは、周産期死亡(死産および出産後28日までの死亡と定義)および6つの重篤な新生児疾患(気管支肺異形成症[BPD]、グレード1超の脳室周囲白質軟化症[PVL]、グレード2超の脳室内出血[IVH]、Bell’sステージ1超の壊死性腸炎[NEC]、グレード2超またはレーザー治療を要する未熟児網膜症[ROP]、培養検査で確認された敗血症)の複合とし、ITT解析にて評価した。治療効果は相対リスク(RR)と95%信頼区間(CI)で推算した。
主要アウトカムの相対リスク0.90
2017年12月4日~2023年7月24日に、計755例が無作為化され、752例がITT解析に組み入れられた(atosiban群375例、プラセボ群377例)。ベースライン特性は両群で類似しており、母体年齢中央値はatosiban群30.0歳、プラセボ群31.0歳、妊娠時BMI中央値は両群とも23.4、白人が両群ともに80%であり、妊娠中の喫煙者は両群とも12%、未経産婦は63%と65%、単胎妊娠が80%と85%などで、無作為化時の妊娠期間中央値は両群とも31.6週であった。ITT集団の新生児数はatosiban群449例、プラセボ群435例であった。
主要アウトカムは、atosiban群の新生児で37/449例(8%)、プラセボ群で40/435例(9%)に報告された(RR:0.90[95%CI:0.58~1.40])。
周産期死亡は、atosiban群3/449例(0.7%)、プラセボ群4/435例(0.9%)であった(RR:0.73[95%CI:0.16~3.23])が、全死亡例で試験薬との関連はおそらくないと見なされた。母体有害事象は両群で差異はなく、また母体の死亡の報告はなかった。
(ケアネット)