乳児の遺伝子検査、迅速全ゲノムvs.標的遺伝子/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2023/07/24

 

 遺伝的疾患が疑われる乳幼児の遺伝子検査として、迅速全ゲノムシークエンスと標的乳幼児遺伝子パネルの分子診断率および結果が得られるまでの時間は同等なのか。米国・Women and Infants Hospital of Rhode IslandのJill L. Maron氏らは、400例を対象に多施設共同前向き比較試験「Genomic Medicine for Ill Neonates and Infants(GEMINI)試験」を行い、ゲノムシークエンスの分子診断率は高率だが、臨床に有用な結果が得られるまでの時間は標的乳幼児遺伝子シーケンス検査よりも遅かったことを示した。乳幼児への遺伝子検査は医療上の決定を導き健康アウトカムの改善を可能とするが、分子診断率や結果が得られるまでの時間が同等なのかについて明らかになっていなかった。JAMA誌2023年7月11日号掲載の報告。

1歳未満児400例に両検査を行い、分子診断率と結果発表までの時間を評価

 研究グループは2019年6月~2021年11月に米国の6病院で、入院中の1歳未満児とその保護者400例を対象に、ゲノムシークエンスと標的乳幼児遺伝子シーケンス検査のアウトカムを比較した。

 試験登録された患児に、ゲノムシークエンスと標的乳幼児遺伝子シーケンス検査を同時に実施。それぞれの検査室で、患児の表現型に関する知識に基づく解釈が行われ、臨床ケアチームに結果が伝えられた。家族には、両検査からの遺伝学的所見に基づき、臨床管理と提供する治療の変更、ケアの方向性の転換が伝えられた。

 主要エンドポイントは、分子診断率(病的バリアントが1つ以上または臨床的意義が不明[VUS]のバリアントを有する患児数と関連する割合で定義)と結果が返ってくるまでの時間(患児の検体を受け取ってから最初の所見が発表されるまでの時間と定義)、臨床的有用性とした。臨床的有用性は、患者への医学的、外科的および/または栄養学的管理の変化や治療目標の変化と定義し、記録担当医(集中治療担当医または遺伝学者)が5ポイントのリッカート尺度(1[まったく無用]~5[非常に有用])で測定評価した。

検査室間のバリアント解釈の違いに留意が必要

 分子診断上の変異は、51%の患児(204例)で同定された。297個のバリアントが同定され、そのうち134個は新規バリアントであった。

 分子診断率は、ゲノムシークエンス49%(95%信頼区間[CI]:44~54)vs.標的乳幼児遺伝子シーケンス検査27%(23~32)であった。標的乳幼児遺伝子シーケンス検査で検出されたがゲノムシークエンスで報告されなかったバリアントは19個であった。一方で、ゲノムシークエンスで診断されたが標的乳幼児遺伝子シーケンス検査で報告されなかったバリアントは164個であった。標的乳幼児遺伝子シーケンス検査で同定されなかったバリアントには、構造的に1kb超のもの(25.1%)や、検査から除外された遺伝子(24.6%)が含まれていた(McNemarオッズ比[OR]:8.6[95%CI:5.4~14.7])。

 検査室間のバリアントの解釈は、43%で違いがみられた。

 結果が返ってくるまでの時間中央値は、ゲノムシークエンスは6.1日、標的乳幼児遺伝子シーケンス検査は4.2日であった。なお緊急症例(107例)では、それぞれ3.3日、4.0日だった。

 臨床ケア変更への影響は、患児の19%でみられた。

 76%の臨床担当医が、診断にかかわらず、臨床上の意思決定に遺伝子検査は有用またはとても有用と見なしていた。

 これらの検討結果を踏まえて著者は、「研究室でのバリアント解釈が、分子診断率の違いに寄与し、臨床管理に関する重要なコンセンサスに関係する可能性があるようだ」と指摘。また、「今回の検討では、分子診断率の違いが臨床アウトカムの改善につながるかどうかの正式な評価を行っていないことを含め、いくつかの限界がある。分子診断率の統計学的優越性の検討は行っておらず、将来の研究で良性であることが明らかになる可能性のあるVUSバリアントも含まれたことが分子診断率の上昇に寄与した可能性もある」と述べている。

(ケアネット)