白内障手術の有効性・安全性、両眼同時vs.片目ずつ/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2023/05/26

 

 高齢者の白内障手術において、両眼同時手術(immediate sequential bilateral cataract surgery:ISBCS)は片眼ずつを別の日に行う従来の待機的手術(delayed sequential bilateral cataract surgery:DSBCS)との比較において、有効性は非劣性、安全性は同等であり、費用対効果は優れることが、オランダ・マーストリヒト大学医療センターのLindsay Spekreijse氏らによる多施設共同無作為化非盲検非劣性試験「bilateral cataract surgery in the Netherlands study:BICAT-NL試験」の結果で示された。著者は、「厳格な適格基準を適用すれば、国家のコストは年間2,740万ユーロ(3,450万米ドル)削減できる可能性があり、ISBCSが支持される」とまとめている。高齢化が進む中、将来、白内障治療を確実に受けられるようにするためには、効率性の改善が必要とされていた。Lancet誌オンライン版2023年5月15日号掲載の報告。

ISBCSとDSBCSに無作為化、有効性・安全性・費用対効果を検討

 研究グループは、オランダの10病院において、単純な両眼の乳化吸引白内障手術が予想され、眼内炎または術後の眼内レンズ度数ずれ(refractive surprise)のリスクが高くない18歳以上の患者を対象に試験を行った。施設および眼軸長で層別化したウェブシステムを用いて、ISBCS群またはDSBCS群のいずれかに1対1の割合で患者を無作為に割り付け、ISBCS群では両眼の手術を同日に、DSBCS群では片眼手術の2週間後にもう片眼の手術を行った。

 主要アウトカムは、術後4週時の目標屈折率が1.0ジオプトリー(D)以下の第2眼(2番目に手術した眼)の割合とし、ISBCS vs.DSBCSの非劣性マージンは-5%とした。また、試験に基づく経済評価では、質調整生存年(QALY)当たりの増分社会的費用を主要エンドポイントとした。すべての解析は、修正intention-to-treat(ITT)解析にて行った。費用は、資源使用量と単価を乗じて計算し、2020年のユーロおよび米ドルに換算した。

有効性は非劣性、安全性は同等、費用対効果は優れる

 2018年9月4日~2020年7月10日の期間に、計865例がISBCS群(427例[49%]、854眼)およびDSBCS群(438例[51%]、876眼)に無作為に割り付けられた。

 修正ITT解析において、目標屈折率が1.0 D以下の第2眼の割合は、ISBCS群97%(404/417例)、DSBCS群98%(407/417例)であった。群間差は-1%(90%信頼区間[CI]:-3~1、p=0.526)で、DSBCS群に対するISBCS群の非劣性が示された。

 眼内炎は、いずれの群においても認められなかった。有害事象は、不同視を除き両群で同等であった。DSBCS群で第1眼と第2眼の手術の間に不同視が生じたと報告した患者が有意に多かった(13例vs.0例)。

 社会的費用は、DSBCS群と比較してISBCS群で403ユーロ(507米ドル)低く、DSBCSに対するISBCSの費用対効果の確率が100%である支払意思額(willingness to pay)の範囲は、2,500~8万ユーロ/QALY(3,145~10万629米ドル/QALY)であった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)