65歳以上低リスク早期乳がん、乳房温存術後の放射線療法は省略可/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2023/02/27

 

 65歳以上の再発リスクが低いホルモン受容体陽性早期乳がん女性患者において、乳房温存術後の放射線療法非施行は、局所再発率の増加と関連していたものの初回イベントとしての遠隔再発や全生存には影響しないことが、英国など4ヵ国76施設で実施された第III相無作為化比較試験「PRIME II試験」の10年時解析で示され、英国・エディンバラ大学のIan H. Kunkler氏らが報告した。著者は、「今回の試験は、乳房温存術を受けたGrade1または2でエストロゲン受容体(ER)高発現の65歳以上の女性では、5年間の術後内分泌療法を受けることを条件に放射線療法を省略できることを示す確かなエビデンスを提供している」とまとめている。NEJM誌2023年2月16日号掲載の報告。

放射線療法なし群とあり群に無作為化、両群とも術後内分泌療法は実施

 研究グループは、T1またはT2の原発性乳がん(最大腫瘍径3cm以下の腫瘍)で乳房温存術を受け、腋窩リンパ節転移陰性、ER陽性またはプロゲステロン受容体陽性、切除断端陰性(1mm以上)で、術前または術後内分泌療法を受けている65歳以上の女性患者(Grade3またはリンパ管浸潤のいずれかを有する患者は除外)を、総線量40~50Gyの全乳房照射を行う群(RTあり群)と行わない群(RTなし群)に1対1の割合で無作為に割り付けた。標準的な術後内分泌療法として、タモキシフェン1日20mgの5年間投与が推奨された。

 主要評価項目は局所再発、副次評価項目は領域再発、遠隔再発、全生存、乳がん特異的生存などであった。

10年時局所再発率はRTなし群9.5% vs.あり群0.9%、10年OSは80.8% vs.80.7%

 2003年4月16日~2009年12月22日の期間に、計1,326例がRTあり群(658例)とRTなし群(668例)に無作為に割り付けられた。

 10年間の追跡(中央値9.1年)において、累積局所再発率はRTなし群9.5%(95%信頼区間[CI]:6.8~12.3)に対してRTあり群0.9%(95%CI:0.1~1.7)で、局所再発のハザード比(HR)は10.4(95%CI:4.1~26.1、p<0.001)であった。局所再発はRTなし群で多かったが、初回イベントとしての遠隔再発の10年累積発生率は、RTなし群1.6%(95%CI:0.4~2.8)、RTあり群3.0%(1.4~4.5)であり、RTなし群で低頻度であった。

 10年全生存率は、RTなし群80.8%(95%CI:77.2~84.3)、RTあり群80.7%(76.9~84.3)で、両群で類似していた。領域再発率、乳がん特異的生存率についても、両群で大きな差はなかった。

 サブグループ解析の結果、ER高発現集団の10年累積局所再発率はRTなし群で8.6%であり、全体集団より低かった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)