経口コロナ薬2剤、オミクロン下での有効性/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2022/10/21

 

 香港では、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)オミクロン株亜系統BA.2.2が流行している時期に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)外来患者へのモルヌピラビルまたはニルマトレルビル+リトナビルの早期投与が、死亡および入院中の疾患進行のリスクを低下したことが、さらにニルマトレルビル+リトナビルは入院リスクも低下したことが、中国・香港大学のCarlos K. H. Wong氏らによる後ろ向き症例対照研究で明らかとなった。SARS-CoV-2オミクロン株に対する経口抗ウイルス薬のリアルワールドでの有効性については、ほとんど示されていなかった。Lancet誌2022年10月8日号掲載の報告。

高リスクCOVID-19外来患者を対象に、経口抗ウイルス薬2種の有効性を調査

 研究グループは、香港病院管理局(Hong Kong Hospital Authority)のデータを用い、香港でオミクロン株亜系統BA.2.2が主流であった2022年2月26日~6月26日の期間に、SARS-CoV-2感染が確認された18歳以上のCOVID-19非入院患者を特定した。解析対象は、重症化リスク(糖尿病、BMI≧30、60歳以上、免疫抑制状態、基礎疾患あり、ワクチン未接種)を有する軽症患者で、発症後5日以内に外来でモルヌピラビル(800mg 1日2回5日間)またはニルマトレルビル+リトナビル(ニルマトレルビル300mg[推定糸球体濾過量30~59mL/分/1.73m2の場合は150mg]+リトナビル100mg 1日2回5日間)の投与が開始された患者であった。老人ホーム入居者、ニルマトレルビル+リトナビルの投与禁忌に該当する患者は、除外された。

 対照群は、入院前にSARS-CoV-2感染が確認され、観察期間中に外来で経口抗ウイルス薬の投与を受けなかった患者のうち、年齢、性別、SARS-CoV-2感染診断日、チャールソン併存疾患指数、ワクチン接種回数に関して傾向スコアがマッチする患者を、1対10の割合で選択した。

 主要評価項目は、全死因死亡、COVID-19関連入院、入院中の疾患進行(院内死亡、侵襲的人工呼吸、集中治療室[ICU]入室)。経口抗ウイルス薬投与群と各対照群との比較は、Cox回帰モデルを用いてハザード比(HR)を推定し評価した。

いずれも全死因死亡、入院後の疾患進行リスクを低下

 COVID-19非入院患者107万4,856例のうち、地域の医療機関で2種類の新規経口抗ウイルス薬のいずれかが開始された患者は1万1,847例(モルヌピラビル群5,383例、ニルマトレルビル+リトナビル群6,464例)で、このうち適格基準を満たし傾向スコアをマッチさせた解析対象集団は、モルヌピラビル群4,983例と対照群4万9,234例、ならびにニルマトレルビル+リトナビル群5,542例と対照群5万4,672例であった。

 追跡期間中央値はモルヌピラビル群103日vs.ニルマトレルビル+リトナビル群99日であり、モルヌピラビル群はニルマトレルビル+リトナビル群より高齢者が多く(>60歳:4,418例[88.7%]vs.4,758例[85.9%])、ワクチン完全接種率が低い(800例[16.1%]vs.1,850例[33.4%])傾向があった。

 モルヌピラビル群は対照群と比較して、全死因死亡(HR:0.76、95%信頼区間[CI]:0.61~0.95)および入院中の疾患進行(0.57、0.43~0.76)のリスクが低下したが、COVID-19関連入院のリスクは両群で同等であった(0.98、0.89~1.06)。

 一方、ニルマトレルビル+リトナビル群は対照群と比較して、全死因死亡(HR:0.34、95%CI:0.22~0.52)、COVID-19関連入院(0.76、0.67~0.86)、および入院中の疾患進行(0.57、0.38~0.87)のリスクが低下した。

 高齢患者においては、経口抗ウイルス薬の早期投与に関連した死亡/入院のリスク低下が一貫して確認された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)