妊娠糖尿病歴あり、心血管・脳血管疾患リスクが45%増/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2022/10/07

 

 妊娠糖尿病歴は、心血管・脳血管疾患全体および個々の疾患のリスク増加と関連しており、その関連は従来の心血管リスク因子やその後の糖尿病発症に起因しないことが、中国・北京大学第一医院のWenhui Xie氏らによるシステマティックレビューおよびメタ解析の結果、明らかとなった。妊娠糖尿病歴がある女性では、心血管疾患全体のリスクが高いことが認識されてきているが、特定の心血管・脳血管疾患や静脈血栓塞栓症に対する妊娠糖尿病の影響は不明な点が多かった。BMJ誌2022年9月21日号掲載の報告。

15件の観察研究、合計約900万例について解析

 研究グループは、PubMed、Embase、Cochrane Libraryを用い、2021年11月1日までに発表された妊娠糖尿病と心血管・脳血管疾患発症との関連を報告した観察研究について検索した(2022年5月26日に更新)。

 2人の研究者が独立してデータを抽出し、試験のバイアスについてはROBINS-I(Risk of Bias in Nonrandomised Studies of Interventions)を、エビデンスの質(確実性)についてはGRADEを用いて評価した。

 主要評価項目は、妊娠糖尿病と、心血管・脳血管疾患全体および各種心血管・脳血管疾患との関連、副次評価項目は各種心血管・脳血管疾患および静脈血栓塞栓症との関連とした。ランダム効果モデルによりデータを統合し、リスク比とその95%信頼区間(CI)を算出し評価した。

 適格基準を満たし解析に組み込まれた研究は15件であった。このうち7件はバイアスリスクが「中」、8件は「深刻」であった。

妊娠糖尿病歴ありで、心血管・脳血管疾患全体のリスクが45%増加

 妊娠糖尿病歴のある女性51万3,324例のうち、9,507例で心血管・脳血管疾患が確認された。一方、妊娠糖尿病歴のない女性800万人以上の対照のうち、7万8,895例に心血管・脳血管疾患が確認された。

 対照と比較して妊娠糖尿病歴のある女性では、心血管・脳血管疾患全体のリスクが45%(リスク比:1.45、95%CI:1.36~1.53)、心血管疾患リスクが72%(1.72、1.40~2.11)、脳血管疾患リスクが40%(1.40、1.29~1.51)上昇した。

 同様に妊娠糖尿病歴のある女性は、冠動脈疾患(1.40、1.18~1.65)、心筋梗塞(1.74、1.37~2.20)、心不全(1.62、1.29~2.05)、狭心症(2.27、1.79~2.87)、心血管手術(1.87、1.34~2.62)、脳卒中(1.45、1.29~1.63)、および虚血性脳卒中(1.49、1.29~1.71)の発症リスクが上昇した。また、静脈血栓塞栓症リスクも、妊娠糖尿病歴のある女性で28%増加することが観察された(1.28、1.13~1.46)。

 心血管・脳血管疾患の転帰に関して、研究の特性および補正因子の有無で層別化したサブグループ解析では、地域(北米vs.欧州vs.アジア)(p=0.078)、試験デザイン(後ろ向きvs.前向き)(p=0.02)、データ源(全国vs.地方データベース)(p=0.005)、ROBINS-I(中vs.深刻)(p=0.04)、喫煙(p=0.03)、BMI(p=0.01)、社会経済的状態(p=0.006)、併存疾患(p=0.05)で有意差が示された。

 その後糖尿病を発症しなかった女性に限ると、心血管・脳血管疾患リスクは低下したものの依然として有意なままであった(妊娠糖尿病歴のある女性全体のRR:1.45[95%CI:1.33~1.59]、その後糖尿病を発症しなかった女性のRR:1.09[1.06~1.13])。

 なお、エビデンスの確実性は、「低い」または「非常に低い」と判定された。

 著者は今回の結果について、「妊娠糖尿病のリスクが高い女性に対する早期介入と、妊娠糖尿病女性に対する継続的なモニタリングの必要性を強調するものである」とまとめている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)