試験継続率向上に、クリスマスカード送付は有効?/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2021/12/24

 

 無作為化比較試験の参加者へクリスマスカードを送っても、試験継続率は増加しなかったが、複数の無作為化比較試験内で同時に研究を行うstudy within a trial(SWAT)の実施は可能であることが示唆された。英国・ヨーク大学のElizabeth Coleman氏らが、幅広い領域の8つの主試験で同時に実施した“無作為化SWAT”の結果を報告した。多くの試験継続戦略が有効性のエビデンスなく使用されていることを受けて、著者は「研究の無駄を避け有効な戦略を確認するため、エビデンスに基づく戦略の評価が必要だ」と今回の検討の意義を述べている。BMJ誌2021年12月14日号クリスマス特集号の「TRADING PLACES」より。

8つの無作為化試験で、参加者をクリスマスカード送付群と非送付群に無作為化

 研究グループは、整形外科、消化器外科、泌尿器科、歯科、禁煙などさまざまな領域の無作為化試験8件において、これら主試験の参加者を、クリスマスカード送付群と非送付群に1対1の割合で無作為に割り付けた(各主試験が個別に割り付けを実施し、参加者は盲検化された)。

 8試験は、「腹腔鏡下胆嚢摘出術と観察/保存的管理の比較」「妊娠中の禁煙支援に関するインセンティブの比較」「デュピュイトラン拘縮に対するコラゲナーゼ注射と手術の比較」「難治性膀胱症状を有する女性の管理における包括的臨床検査と侵襲的な尿流動態検査併用との比較」「65歳以上の上腕骨近位部骨折患者における3種類の手術の比較」「腎下極結石に対する経皮的腎砕石術、体外衝撃波結石破砕術および軟性尿管鏡下レーザー砕石術の比較」「高リスク高齢者における虫歯の予防・治療のためのフッ素入り歯磨き粉処方と通常ケアの比較」「術後創の二次治癒に対する陰圧閉鎖療法とドレッシングの比較」。

 主要評価項目は、主試験における次回の追跡調査を完了した参加者の割合(試験継続率)、副次評価項目は追跡調査完了までの期間、カード送付1枚当たりの介入費用(人件費、印刷・郵送費など)とした。

 2019年12月に、主試験8件において計3,223例が無作為化され、2020年3月31日までに追跡調査が行われた1,469例が解析対象となった。当初、試験期間は2020年12月までであったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行のため早期中止となった。

クリスマスカード送付、試験継続戦略としての効果は認められず

 解析対象1,469例の患者背景は、年齢16~94歳、女性が70%(1,033例)、白人が96%であった。

 試験継続率は、主試験ごとの個別解析および統合解析のいずれにおいても、クリスマスカード送付群と非送付群で差は認められなかった。統合解析での試験継続率は、送付群85.3%(639/749例)、非送付群85.4%(615/720例)、オッズ比[OR]は0.96(95%信頼区間[CI]:0.71~1.29、p=0.77)であった。

 クリスマスカード受領後30日以内に追跡調査がある参加者を比較した場合でも、両群間で差はなかった(OR:0.96、95%CI:0.42~2.21)。追跡調査完了までの期間も、群間差は確認されなかった(ハザード比[HR]:1.01、95%CI:0.91~1.13、p=0.80)。これらは、事後感度解析でも同様の結果が得られた。

 介入費用は参加者1例当たり0.76ポンド(0.91ユーロ、1.02ドル)、カーボンフットプリントではカード1枚当たり約140gのCO2(二酸化炭素)排出量に相当した。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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コメンテーター : 折笠 秀樹( おりがさ ひでき ) 氏

統計数理研究所 大学統計教員育成センター 特任教授

滋賀大学 データサイエンス・AIイノベーション研究推進センター 特任教授

J-CLEAR評議員