心原性ショックの薬物療法、ミルリノンvs.ドブタミン/NEJM

心原性ショックの薬物療法について、ミルリノンとドブタミンは、院内死亡や蘇生された心停止、心臓移植や機械的循環補助といった複合アウトカムの発生率に有意差はないことが示された。各項目単独の発生率についても、両群で有意差は認められなかった。カナダ・オタワ大学のRebecca Mathew氏らが、192例を対象に行った無作為化比較試験の結果を発表した。心原性ショックは高い罹患率および死亡率と関連している。変力性サポートは、心原性ショックの中心的な薬物治療だが、現状では臨床における変力性薬剤の選択肢を示すエビデンスはほとんどないという。NEJM誌2021年8月5日号掲載の報告。
二重盲検下で無作為化し、ミルリノンまたはドブタミンを投与
研究グループは、心原性ショックの患者を二重盲検下で無作為に2群に割り付け、一方にはミルリノンを、もう一方にはドブタミンを投与した。主要アウトカムは、院内死亡、蘇生された心停止、心臓移植、機械的循環補助の実施、非致死的心筋梗塞、神経内科医の診断による一過性脳虚血発作または脳梗塞、腎代替療法の開始の複合アウトカムだった。
副次アウトカムは、主要複合アウトカムの各項目などだった。
主要アウトカム発生率、両群ともに約半数で有意差なし
被験者総数は192例(各群96例)だった。主要アウトカム発生については、ミルリノン群47例(49%)、ドブタミン群52例(54%)で有意差はなかった(相対リスク[RR]:0.90、95%信頼区間[CI]:0.69~1.19、p=0.47)。副次アウトカムの発生についても、院内死亡(ミルリノン群37%、ドブタミン群43%、RR:0.85、95%CI:0.60~1.21)、蘇生された心停止(7%、9%、ハザード比[HR]:0.78、95%CI:0.29~2.07)、機械的循環補助の実施(12%、15%、HR:0.78、95%CI:0.36~1.71)、腎代替療法の開始(22%、17%、HR:1.39、95%CI:0.73~2.67)と、群間の有意差はなかった。
(医療ジャーナリスト 當麻 あづさ)
関連記事

Impellaは心原性ショックを伴う急性心筋梗塞に対するPCI症例の循環補助にIABPよりも有効か有害か?:入院死亡率と出血合併症率の比較検討(解説:許俊鋭 氏)-1200
CLEAR!ジャーナル四天王(2020/03/13)

心原性ショックのAMI、軸流ポンプLVAD vs.IABP/JAMA
ジャーナル四天王(2020/02/21)

虚血性心筋症におけるCABG後の心筋生存能と生存転帰の関連/NEJM
ジャーナル四天王(2019/09/03)
[ 最新ニュース ]

子宮内膜症、レルゴリクス併用療法が有効か/Lancet(2022/07/01)

費用対効果分析へのスポンサーバイアスは?/BMJ(2022/07/01)

抗体-薬物複合免疫賦活薬(iADC)の創製で戦略的提携/アステラス・Sutro(2022/07/01)

追加接種のタイミング、6ヵ月以上でより高い有効性か(2022/07/01)

男性の肥満のないNAFLD、テストステロン低下が要因か/日本抗加齢医学会(2022/07/01)

日本人労働者の睡眠負債がプレゼンティズムや心理的苦痛に及ぼす影響(2022/07/01)

新型コロナ発症から15ヵ月後も多くの患者で後遺症が持続(2022/07/01)

糖尿病患者の便秘が冠動脈疾患に独立して関連―江戸川病院(2022/07/01)
[ あわせて読みたい ]
アクティブラーニングで英語習得!医療者限定のオンラインプログラム開講(2021/07/15)
総合内科専門医試験オールスターレクチャー 膠原病(2021/07/15)
総合内科専門医試験オールスターレクチャー 消化器(消化管)(2021/07/15)
総合内科専門医試験オールスターレクチャー 消化器(肝胆膵)(2021/07/15)
総合内科専門医試験オールスターレクチャー 感染症(2021/07/15)
総合内科専門医試験オールスターレクチャー 腎臓(2021/06/10)
総合内科専門医試験オールスターレクチャー 循環器(2021/06/10)
総合内科専門医試験オールスターレクチャー 内分泌・代謝(2021/04/20)
総合内科専門医試験オールスターレクチャー 呼吸器(2021/04/20)
心不全特集まとめインデックス(2020/10/01)
専門家はこう見る
疑問点ばかりが浮かぶ研究(解説:野間重孝氏)
コメンテーター : 野間 重孝( のま しげたか ) 氏
栃木県済生会宇都宮病院 院長
J-CLEAR評議員