JAK阻害薬upadacitinib、対アダリムマブの優越性は?/NEJM

乾癬性関節炎患者の治療において、ウパダシチニブはプラセボおよびアダリムマブと比較して、12週時に米国リウマチ学会(ACR)基準で20%の改善(ACR20)を達成した患者の割合が高いが、プラセボに比べ有害事象が高頻度にみられることが、英国・グラスゴー大学のIain B. McInnes氏らが行った「SELECT-PsA 1試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2021年4月1日号に掲載された。ウパダシチニブは、可逆的な経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬で、関節リウマチの治療薬として承認されている。また、アダリムマブは、腫瘍壊死因子α阻害薬であり、関節リウマチおよび乾癬性関節炎の治療に使用されている。
2種の用量を評価する国際的な二重盲検第III相試験
本研究は、非生物学的疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)の効果が不十分な乾癬性関節炎患者におけるウパダシチニブの有用性を、プラセボおよびアダリムマブと比較する24週の二重盲検第III相試験であり、日本を含む45ヵ国281施設が参加し、2017年4月~2019年12月の期間に実施された(AbbVieの助成による)。対象は、年齢18歳以上、乾癬性関節炎と診断され、「乾癬性関節炎分類基準(Classification Criteria for Psoriatic Arthritis)」を満たし、過去または現在、尋常性乾癬に罹患している患者であった。
被験者は、ウパダシチニブ15mgまたは30mgを1日1回経口投与する群、プラセボ群、アダリムマブ40mgを隔週で皮下投与する群に、1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。
主要エンドポイントは、プラセボと比較した12週時のACR20の達成とした。ACR20は、圧痛・腫脹関節数の20%以上の減少、および他の5つの項目(疾患活動性の患者・医師による評価、質問票による身体機能の評価、患者による疼痛評価、高感度C反応性蛋白)のうち少なくとも3つの20%以上の改善と定義された。副次エンドポイントには、アダリムマブとの比較が含まれた。
15mg群は、アダリムマブ群に対する優越性はない
1,704例が、少なくとも1回の実薬またはプラセボの投与を受けた。ウパダシチニブ15mg群が429例(平均年齢[SD]51.6±12.2歳、女性55.5%)、同30mg群が423例(49.9±12.4歳、55.8%)、プラセボ群が423例(50.4±12.2歳、49.9%)、アダリムマブ群は429例(51.4±12.0歳、51.7%)であった。12週の時点で、ACR20を達成した患者の割合は、ウパダシチニブ15mg群が70.6%、同30mg群が78.5%、プラセボ群が36.2%、アダリムマブ群は65.0%であった。15mg群とプラセボ群の差は34.5ポイント(95%信頼区間[CI]:28.2~40.7、p<0.001)、30mg群とプラセボ群の差は42.3ポイント(36.3~48.3、p<0.001)であり、ウパダシチニブの2つの用量はいずれもプラセボ群に比べ有意に優れた。
また、15mg群とアダリムマブ群の群間差は5.6ポイント(95%CI:-0.6~11.8)、30mg群とアダリムマブ群との群間差は13.5ポイント(7.5~19.4、p<0.001)であった。12週時のACR20達成割合に関して、ウパダシチニブの2つの用量はいずれも、アダリムマブ群に対し非劣性であった。優越性は、30mg群では認められたものの、15mg群ではみられなかった。
24週までの有害事象の発生率は、ウパダシチニブ15mg群が66.9%、同30mg群が72.3%、プラセボ群が59.6%、アダリムマブ群は64.8%であった。重篤な感染症は、それぞれ1.2%、2.6%、0.9%、0.7%に発現し、ウパダシチニブ群で多かった。肝障害は、15mg群が9.1%、30mg群が12.3%でみられたが、Grade3のアミノトランスフェラーゼ上昇の発生は全群で2%以下だった。
著者は、「ウパダシチニブの効果とリスクを明らかにし、その効果を乾癬性関節炎の治療に使用されている他の薬剤と比較するには、より長期で、より大規模な試験が求められる」としている。
(医学ライター 菅野 守)
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