TNF阻害薬効果不十分のRA、トシリズマブvs.リツキシマブ/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2021/02/05

 

 TNF阻害薬で効果不十分の関節リウマチ患者において、RNAシークエンシングに基づく滑膜組織の層別化は病理組織学的分類と比較して臨床効果とより強く関連しており、滑膜組織のB細胞が低発現または存在しない場合は、リツキシマブよりトシリズマブが有効であることを、英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のFrances Humby氏らが、多施設共同無作為化非盲検第IV相比較試験「rituximab vs tocilizumab in anti-TNF inadequate responder patients with rheumatoid arthritis:R4RA試験」の16週間の解析結果、報告した。生物学的製剤は関節リウマチの臨床経過を大きく変えたが、40%の患者は十分な効果を得られないことが示唆されており、その機序はいまだ明らかになっていない。関節リウマチ患者の50%以上は、リツキシマブの標的であるCD20 B細胞が滑膜組織に存在しない、または少ないために、IL-6受容体阻害薬のトシリズマブのほうが有効である可能性が考えられていた。Lancet誌2021年1月23日号掲載の報告。

滑膜組織のB細胞発現で分類し、リツキシマブとトシリズマブの有効性を比較

 研究グループは欧州5ヵ国(英国、ベルギー、イタリア、ポルトガル、スペイン)の19施設において、「ACR/EULAR関節リウマチの分類基準2010年」を満たし、英国のNICEガイドラインに従いリツキシマブによる治療の対象となる18歳以上の関節リウマチ患者を登録。ベースラインの滑膜生検におけるB細胞発現(組織学的にB細胞が多い「B細胞rich」または少ない「B細胞poor」に分類)を層別因子として、リツキシマブ群(1,000mgを2週間隔で2回点滴投与)またはトシリズマブ群(8mg/kgを4週間隔で点滴投与)に、1対1の割合で無作為に割り付けた。また、層別化の精度を高めるため、ベースライン滑膜生検組織についてRNAシークエンシングを行い、B細胞の分子シグネチャーで再分類した。

 主要評価項目は、臨床的疾患活動性指標(CDAI)のベースラインからの50%改善(CDAI 50%)とした。

RNAシークエンシングでB細胞poorの場合、トシリズマブが有意に奏効

 2013年2月28日~2019年1月17日に164例が組織学的に分類され、リツキシマブ群(83例、51%)またはトシリズマブ群(81例、49%)に割り付けられた。

 組織学的なB細胞poorの患者集団では、CDAI 50%を達成した患者の割合はリツキシマブ群(45%、17/38例)とトシリズマブ群(56%、23/41例)で有意差は認められなかった(群間差:11%、95%信頼区間[CI]:-11~33、p=0.31)。しかし、RNAシークエンシングによるB細胞poorの患者集団では、CDAI 50%を達成した患者の割合はリツキシマブ群(36%、12/33例)と比較してトシリズマブ群(63%、20/32例)で有意に高かった(群間差:26%、95%CI:2~50、p=0.035)。

 有害事象の発現率はリツキシマブ群70%(76/108例)、トシリズマブ群80%(94/117例)(群間差:10%、95%CI:-1~21)、重篤な有害事象の発現率はそれぞれ7%(8/108例)、10%(12/117例)であり(3%、-5~10)、いずれも両群で有意差はなかった。

(医学ライター 吉尾 幸恵)