術後管理への管理図使用、有害事象を有意に削減/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2020/11/17

 

 手術後モニタリングにおいて、手術チームへの規則的な指標のフィードバックを伴う管理図(control chart)の使用は、主要有害事象と死亡を統計学的に有意に減少することが、フランス・クロード・ベルナール・リヨン第1大学のAntoine Duclos氏らSHEWHART Trial Groupによるクラスター無作為化試験の結果、示された。著者は、「示された結果は、管理図のルーチン使用が術後主要有害事象の予防に役立つことを支持するものである」と述べている。アウトカムをモニタリングするための管理図は、製品やサービスの質の改善ツールとして、産業界では50年以上にわたり広く使用されている。医療においても幅広い適用が示唆されているが、管理図を用いたアウトカムのモニタリングが、入院患者の有害事象発生を低下するのか、全国規模での具体的なエビデンスは乏しかったという。BMJ誌2020年11月4日号掲載の報告。

フランス国内の病院手術部門40ヵ所でクラスター無作為化試験

 研究グループは、フランス国内の全病院を対象とした並行群クラスター無作為化試験に基づく差分の差分分析(difference-in-differences analysis)を行い、管理図と手術チームへの規則的な指標のフィードバックを有する前向きアウトカムモニタリングの導入による、患者の主要有害事象への影響を評価した。フランス国内の病院手術部門40ヵ所を対象とし、消化器系の手術を受けた15万5,362例の患者の参加を得た。

 20の手術部門を管理図使用(介入)群に、20の手術部門を通常ケアのみ(対照)群に無作為化し、介入群では、指標に関する規則的なフィードバックとシューハート管理図を用いたアウトカムの前向きモニタリングが行われた。介入プログラムの実施を容易にするために、各病院において、執刀医と手術チームメンバー(外科医、麻酔科医あるいは看護師)からなる試験対象チームのパートナーシップ(主導権を誰が握るかを明確にする)を確立し、チーム会議の開催、手術室での管理図掲示、日報の記述継続、改善計画の考案についてトレーニング研修が行われた。

 主要アウトカムは、術後30日間の主要有害事象の複合(院内死、集中治療室の入室期間、再手術、重篤な合併症)の発生であった。患者を混在およびクラスター化して補正後、プログラム導入前後の手術アウトカムの変化を、介入群と対照群で比較した。

管理図導入後、主要有害事象の絶対リスクが減少

 介入群7万5,047例(プログラム導入前3万7,579例、導入後3万7,468例)と、対照群8万315例(同4万1,548例、3万8,767例)が解析に含まれた。

 管理図導入後、主要有害事象の絶対リスクは、対照群と比べて介入群は0.9%(95%信頼区間[CI]:0.4~1.4)低かった。主要有害事象1例の予防に必要な介入患者数は114例(70~280)であった。

 対照群と比べて介入群の主要有害事象は有意に減少し(補正後オッズ比[OR]:0.89、95%CI:0.83~0.96、p=0.001)、同様に有意な減少が院内死(0.84、0.71~0.99、p=0.04)、集中治療室入室(0.85、0.76~0.94、p=0.001)でも認められた。また、同じような減少の傾向は、再手術(0.91、0.82~1.00、p=0.06)でもみられたが、重篤な合併症発生については変化がみられなかった(0.96、0.87~1.07、p=0.46)。

 介入群における効果サイズは、管理図導入の程度に比例していた。コンプライアンスが高い病院は、主要有害事象(補正後OR:0.84、95%CI:0.77~0.92、p<0.001)、院内死(0.78、0.63~0.97、p=0.02)、集中治療室入室(0.76、0.67~0.87、p<0.001)、および再手術(0.84、0.74~0.96、p=0.009)について、いずれもより大きな減少がみられた。このことから著者は、「手術アウトカムの変化および安全な手術を提供する方法を理解することは、改善に不可欠である」と指摘している。

(ケアネット)