医学研究者に週末や休日はあるか/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2020/01/15

 

 医学研究者は、全般に週末や祝日、深夜の時間外労働(論文の投稿、査読結果の報告)の割合が高いが、国によって差がみられ、この傾向は経時的にほとんど変化していないことが、オーストラリア・クイーンズランド工科大学のAdrian Barnett氏らの調査で明らかとなった。大学の格付け順位表は、研究者に「論文を発表せよ、しからずんば去れ(publish or perish)」を促す管理手段として活用されている。研究者は、研究と論文執筆の要請に応えるために長時間働いていると考えられ、学術および臨床における過重労働には苦言も多いという。BMJ誌2019年12月19日号クリスマス特集号の「Shiny Happy People」より。

投稿論文と査読報告の送信日時を解析
 研究グループは、就業時間外における投稿論文および査読報告の提出の状況を調査し、その経時的な変化について検討する目的で観察研究を行った(筆頭著者は、オーストラリア国家保健医療研究会議[NHMRC]の助成を受けた)。

 解析には、ロンドン市を拠点とする2つの国際的な医学ジャーナル(BMJ誌、BMJ Open誌)の投稿システムのデータを用いた。2012年1月1日~2019年4月5日の期間(2,651日間)に提出された研究論文と査読報告の送信日時を解析した。

 主要アウトカムは、週末(土曜日、日曜日)、国民の祝日(地域の祝日は除く)、早朝・深夜の時間帯の投稿論文および査読報告の提出とした。ロジスティック回帰を用いて提出の確率を推定した。回帰モデルにはベイジアン・パラダイムを使用し、95%確信区間(credible interval:CI)を算出した。

日本は週末、祝日、午前0時前後の提出の確率が高い
 4万9,464本の投稿論文および7万6,678本の査読報告が解析に含まれた。以下に示すように、時間外労働の割合は高く、同一の週の平日と比較して、週末および祝日は労働の平均確率が高かった。

 週末に提出される確率は、投稿論文(平均確率:BMJ誌0.14[95%CI:0.12~0.15]、BMJ Open誌0.14[0.13~0.15])および査読報告(0.18[0.16~0.20]、0.18[0.17~0.20])の双方において、2誌とも同じ値であった。週末に提出される確率は、査読報告が投稿論文に比べて高かった。

 祝日に提出される確率は、査読報告(平均確率:BMJ誌0.13[0.11~0.15]、BMJ Open誌0.12[0.11~0.13])が投稿論文(0.08[0.07~0.10]、0.10[0.08~0.11])よりも高かった。

 週末と祝日に提出された投稿論文および査読報告の平均確率には、2誌とも経時的な変化は認められなかった。

 BMJ誌への週末と祝日の投稿論文の提出の確率は、国によって明確な差が認められた。たとえば、週末の提出は、インドが最も低く中国が最も高かった(日本は26ヵ国中6番目に高い)。祝日の提出は、カナダが最も低くベルギーが最も高かった(日本は21ヵ国中4番目に高い)。

 中国は、2誌への週末の投稿論文および査読報告の確率(0.22~0.23)が最も高かったが、祝日(0.08~0.12)は低かった。北欧諸国(ノルウェー、デンマーク、フィンランド、スウェーデン)は週末の労働の確率(0.10~0.17)が最も低い国に含まれ、平日および日中の提出の確率が最も高かった。ベルギーは祝日の労働の確率が最も高かった(0.09~0.18)。

 日本は、投稿論文および査読報告の提出の確率が、週末(0.15~0.20)および祝日(0.08~0.18)の双方で、高い傾向が認められた。

 1日のうち提出の頻度が高い時間帯は、就業日の終わり(午後3~5時)であった。正午付近も提出が集中しており、おそらく昼食中に仕事をする研究者が多いことを反映している可能性がある。また、中国と日本は、午前0時前後に投稿論文および査読報告を提出する確率が最も高かった。

 著者は、「時間外労働は国によって差があり経時的な変化がないという結果は、『過重労働の文化(culture of overwork)』は文字どおりの意味であり、比喩的な表現ではまったくないことを示す。『週末(weekend)』という言葉は、多くの研究者にとって、誤った名称である」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 折笠 秀樹( おりがさ ひでき ) 氏

富山大学大学院医学薬学研究部バイオ統計学・ 臨床疫学 教授

J-CLEAR評議員