世界の末期腎不全医療の現状が明らかに/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2019/11/19

 

 低所得国も含めた世界の末期腎不全(ESKD)医療の現状には大きなばらつきがあることが、カナダ・アルバータ大学のAminu K. Bello氏らによる国際断面調査の結果、明らかにされた。ESKD有病率は800倍以上の差がみられ、腎代替療法(透析、移植)に公的資金が投じられている国は64%、透析が利用可能な国は100%であったが腹膜透析は76%であり、保存療法が利用可能な国は81%であることなどが示された(割合はそれぞれ各データが入手できた国を分母としたもの)。過去10年間で、腎疾患の世界的な疫学や経済的側面について大きく理解が進んでいる。とくに低・中所得国の急性腎障害(AKI)、慢性腎臓病(CKD)およびESKDの負荷に関するデータがより多く入手できるようになっているが、それらの疾患が人々の健康に大きな影響を及ぼすにもかかわらず、AKI、CKDは概して、国際・地域あるいは各国の慢性疾患コントロール戦略には含まれていないという。BMJ誌2019年10月31日号掲載の報告。

182ヵ国対象に腎代替療法(透析、移植)と保存療法の供給能を調査
 研究グループは、腎代替療法(透析、移植)と保存療法の世界的な供給能(利用可能性、アクセスのしやすさ、質、価格の手頃さ)を明らかにするため、2018年7月~9月に国際腎臓学会(ISN)を通じて182ヵ国の人々を対象とするサーベイを行った。サーベイの参加者は、ISNの10地域のボード(アフリカ、中央・東欧州、中南米、中東、北米、北東アジア、オセアニア・東南アジア、ロシアと旧ソ連諸国、南アジア、西欧州)を通じて、各国および地域のリーダーによって選定された主要なステークホルダー(各国の腎臓学会の代表、政策立案者、患者団体、基金、その他アドボカシーグループなど)であった。それぞれに、オンラインアンケートのポータルサイトアドレスを含む招待状を送付し、完全かつタイムリーな回答を確実なものとするため、サーベイ期間中にISNの各国・地域のリーダーが、eメールや電話で集中的フォローアップを行った。
 主要評価項目は、腎代替療法と保存療法を構成する主要項目の、国家的な供給能の指標とした。

資金提供、医療従事者、サービス供給、利用可能なテクノロジーに大きなばらつき
 回答は、182ヵ国中160ヵ国(87.9%)から得られ、世界の人口の97.8%(75億130万人のうち73億3,850万人)が包含された。

 腎代替療法と保存療法の供給能および構成項目(すなわち資金提供の仕組み、医療従事者、サービスの供給、利用可能なテクノロジー)には、大きなばらつきがみられた。

 治療が行われているESKDの有病率に関する情報は、世界218ヵ国中91ヵ国(42%)について得られた。推定有病率は4~3,392例/100万人と800倍以上の差異があった。また、データを報告した国の中で、ルワンダのみが低所得国であった。アフリカ諸国でデータを報告したのは53ヵ国中5ヵ国(<10%)であった。

 159ヵ国中102ヵ国(64%)で、腎代替療法に公的資金が投じられていた。また、159ヵ国中68ヵ国(43%)はポイントオブケアの提供が無料だったが、34ヵ国(21%)は有料であった。

 156ヵ国中、血液透析が利用可能と報告した国は156ヵ国(100%)であったが、腹膜透析は119ヵ国(76%)だった。また、腎移植は155ヵ国中114ヵ国(74%)が利用可能と報告した。一方で、保存療法は、154ヵ国中124ヵ国(81%)で利用可能だった。

 世界の腎臓専門医数は、中央値9.96人/100万人で、国の所得レベルによってばらつきがみられた。100万人当たりで、最低所得国は0.04人、低・中所得国は5.0人、高・中所得国は13.5人、高所得国は26.5人などであった。

 著者は、「これらの総合データは、低所得国を含む各国のESKD患者への最適なケアについて、供給能の現状を示すものである」と述べ、「ESKDの疾患負荷と腎代替療法および保存療法の供給能には大きなばらつきがあることが示された。また、それらが政策の影響を受けていることも判明した」とまとめている。

(ケアネット)