次世代CFTR矯正薬、嚢胞性線維症の呼吸機能を改善/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2019/11/18

 

 嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子遺伝子(CFTR)のF508del変異ホモ接合体を有する嚢胞性線維症の治療において、tezacaftor+ivacaftorにelexacaftorを併用すると、tezacaftor+ivacaftorと比較して、良好な安全性プロファイルとともに、呼吸機能が著明に改善することが、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのHarry G M Heijerman氏らが行ったVX17-445-103試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年10月31日号に掲載された。CFTR調節薬は、CFTR遺伝子変異に起因する根本的な異常を矯正するとされる。CFTRF508del変異ホモ接合体を有する嚢胞性線維症患者では、CFTR矯正薬(tezacaftor)とCFTR増強薬(ivacaftor)の併用により、健康アウトカムの改善が達成されている。同型の嚢胞性線維症患者の第II相試験において、次世代CFTR矯正薬であるelexacaftorは、tezacaftor+ivacaftorと併用することで、F508del-CFTR機能と臨床アウトカムをさらに改善したと報告されていた。

欧米4ヵ国が参加した無作為化実薬対照試験
 本研究は、4ヵ国(ベルギー、オランダ、英国、米国)の44施設が参加した多施設共同二重盲検無作為化実薬対照第III相試験であり、2018年8月3日~12月28日の期間に患者登録が行われた(Vertex Pharmaceuticalsの助成による)。

 対象は、年齢12歳以上、予測1秒量に対する比率(ppFEV1)が40~90%で、病態が安定したCFTRF508del変異ホモ接合体を有する嚢胞性線維症の患者であった。

 被験者は、標準治療(tezacaftor+ivacaftor)による4週間の導入期間終了後に、elexacaftor(200mg、1日1回、経口投与)+tezacaftor(100mg、1日1回、経口投与)+ivacaftor(150mg、12時間ごとに経口投与)またはtezacaftor(100mg、1日1回、経口投与)+ivacaftor(150mg、12時間ごとに経口投与)を4週間投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。

 主要アウトカムは、ベースライン(導入期間の最終評価日)から4週までのppFEV1の絶対変化とした。主な副次アウトカムは、汗中クロライド濃度(CFTR機能のin-vivoマーカー)と、嚢胞性線維症質問票改訂版の呼吸器領域(CFQ-R RD)スコア(0~100点、点数が高いほど呼吸器関連の患者報告QOLが良好)であった。

汗中クロライド濃度が診断閾値以下に
 導入期間後に107例が登録され、3剤併用群に55例(平均年齢28.8[SD 11.5]歳、女性31例[56%])、2剤併用群には52例(27.9[10.8]歳、28例[54%])が割り付けられ、4週の治療を完了した。

 ベースラインの平均ppFEV1は、3剤併用群が61.6(SD 15.4)%、2剤併用群は60.2(14.4)%、平均汗中クロライド濃度はそれぞれ91.4(11.0)mmol/Lおよび90.0(12.3)mmol/L、平均CFQ-R RDスコアは70.6(16.2)点および72.6(17.9)点だった。

 ベースラインから4週までのppFEV1の絶対変化の最小二乗平均(LSM)は、3剤併用群が10.4ポイント(95%信頼区間[CI]:8.6~12.2)、2剤併用群は0.4ポイント(-1.4~2.3)であり、両群間のLSM差は10.0ポイント(7.4~12.6)と、3剤併用群で改善効果が有意に優れた(p<0.0001)。

 汗中クロライド濃度の絶対変化(LSMは3剤併用群-43.4mmol/L[95%CI:-46.9~-40.0]vs.2剤併用群1.7mmol/L[-1.9~5.3]、LSM差:-45.1mmol/L[-50.1~-40.1]、p<0.0001)およびCFQ-R RDスコアの絶対変化(16.0点[12.1~19.9]vs.-1.4点[-5.4~2.6]、17.4点[11.8~23.0]、p<0.0001)は、いずれも3剤併用群で良好であった。

 3剤併用群は、4週後の平均汗中クロライド濃度が、嚢胞性線維症の診断閾値(60mmol/L)を下回っており、平均CFQ-R RDスコアは、安定期の嚢胞性線維症患者における臨床的に意義のある最小変化量である4点を上回っていた。

 3剤併用群は良好な忍容性を示し、治療中止例はなかった。ほとんどの有害事象は軽度~中等度であり、重篤な有害事象は3剤併用群が2例(4%、皮疹、肺増悪[嚢胞性線維症の感染性肺増悪])、2剤併用群は1例(2%、肺増悪)で認められた。

 著者は、「この治療の進歩は、疾病の自然史を修正する可能性があり、嚢胞性線維症患者の生命に意義のある改善をもたらすとともに、治療の様相に深い影響を及ぼす」としている。

(医学ライター 菅野 守)