小脳脳内出血、血腫除去vs.保存的治療/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2019/10/23

 

 小脳の脳内出血(ICH)を呈した患者において、外科的治療としての血腫除去は保存的治療と比べて、機能的アウトカムを改善しないことが、ドイツ・エアランゲン・ニュルンベルク大学のJoji B. Kuramatsu氏らによるメタ解析の結果、明らかにされた。主要アウトカムとした3ヵ月時点の機能的アウトカムについて、有意差は示されなかった。結果を受けて著者は、「血腫容量で機能的アウトカムとの関連に違いがないかを明らかにする必要はある」と述べている。JAMA誌2019年10月8日号掲載の報告。

4つのICH観察研究を統合しIPDメタ解析
 研究グループは、小脳ICHに対する血腫除去手術と臨床的アウトカムの関連を明らかにするため、2006~15年にドイツ国内の64病院で治療を受けた6,580例が参加した4つのICH観察研究を統合し、参加患者個々人のデータ(individual participant data:IPD)に基づくメタ解析を行った。

 血腫除去手術を受けた患者と保存的治療を受けた患者を比較。主要アウトカムは、修正Rankinスケール(mRS)スコア(範囲:0[機能障害なし]~6[死亡])を用いて3ヵ月時点で評価した機能的障害(良好[mRS:0~3]vs.不良[4~6])。副次アウトカムは、3ヵ月時点および12ヵ月時点の生存率などとした。

 解析は、傾向スコア適合および共変数を補正して行い、確率予測を用いて小脳ICHの治療関連カットオフ値を確認した。

3ヵ月時点の機能的アウトカム、血腫除去手術群の有意な改善の可能性認められず
 小脳ICHを呈した578例のうち、傾向スコア適合解析には、血腫除去手術群152例(平均年齢68.9歳、男性55.9%、経口抗凝固薬使用60.5%、ICH容量中央値20.5cm3)、保存的治療群152例(69.2歳、51.3%、63.8%、18.8cm3)を包含し比較した。

 補正後、血腫除去手術群は保存的治療群と比較して、3ヵ月時点で機能的障害が有意により良好となる可能性は認められなかった(30.9% vs.35.5%、補正後オッズ比[AOR]:0.94[95%信頼区間[CI]:0.81~1.09、p=0.43]、補正後リスク差[ARD]:-3.7%[95%CI:-8.7~1.2])。

 一方で、副次アウトカムの3ヵ月時点の生存率(78.3% vs.61.2%、AOR:1.25[95%CI:1.07~1.45、p=0.005]、ARD:18.5%[95%CI:13.8~23.2])、12ヵ月時点の生存率(71.7% vs.57.2%、AOR:1.21[95%CI:1.03~1.42、p=0.02]、ARD:17.0%[95%CI:11.5~22.6])は、有意により増大する可能性が認められた。

 カットオフ値の容量範囲は12~15cm3であった。これより低容量(≦12cm3)では、血腫除去手術が良好な機能的アウトカムと関連する可能性は低いことが確認された(30.6% vs.62.3%[p=0.003]、ARD:-34.7%[-38.8~-30.6]、交互作用のp=0.01)。高容量(≧15cm3)では、生存率が増大する可能性が認められた(74.5% vs.45.1%[p<0.001]、ARD:28.2%[24.6~31.8]、交互作用のp=0.02)。

(ケアネット)