頭蓋内圧亢進の診断に非侵襲的手法は有用か?/BMJ

提供元:ケアネット

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公開日:2019/08/02

 

 重症患者の頭蓋内圧亢進の診断において、身体所見(瞳孔散大、グラスゴー・コーマ・スケール[GCS]の最良運動反応が3以下の異常姿勢、GCS合計8以下の意識レベル低下)、画像診断(脳底槽の消失、正中偏位)、および非侵襲的検査は、いずれも診断精度が乏しく、頭蓋内圧亢進の除外診断にこれらの検査を単独で用いるべきではないことが示された。カナダ・オタワ大学のShannon M. Fernando氏らが、システマティックレビューおよびメタ解析の結果を報告した。頭蓋内圧亢進の確定診断には侵襲的なモニタリングが必要であるが、出血や感染などの合併症が懸念され、すべての状況で利用できるわけではないことから、臨床医はしばしば非侵襲的検査に頼らざるを得ないが、これらの診断精度は不明であった。著者は、「頭蓋内圧亢進が強く疑われる場合は、個々の非侵襲的検査の結果にかかわらず、侵襲的頭蓋内圧モニターの留置が可能な施設へ搬送し治療する必要があろう」とまとめている。BMJ誌2019年7月24日号掲載の報告。

身体所見、CT、超音波検査などの精度を比較検証
 研究グループは、重症患者の頭蓋内圧亢進を診断するための、身体所見、CT、超音波検査による視神経鞘径(ONSD)、経頭蓋超音波ドプラ法による拍動係数(TCD-PI)の精度を比較検証することを目的とした。Medline、EMBASE、PubMedなどを含む6つのデータベースを用い、2018年9月1日までに発表された、重症患者を対象に身体所見、画像診断および非侵襲的検査の精度を検証した英語論文を検索し、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。

 侵襲的頭蓋内圧モニターによる頭蓋内圧(ICP)20mmHg以上、あるいはICP上昇の術中診断を参照基準とした。2人の評価者がそれぞれデータを抽出し、診断精度研究の質評価ツール(QUADAS-2)を用いて研究の質を評価するとともに、階層サマリーROC モデルを用いて要約推定値を算出した。

 検索により40件の研究、計5,123例がメタ解析に組み込まれた。

非侵襲的検査の感度と特異度は高くない
 頭蓋内圧亢進診断における身体所見の感度/特異度(95%CI)は、瞳孔散大が28.2%(16.0~44.8)/85.9%(74.9~92.5)、異常姿勢が54.3%(36.6~71.0)/63.6%(46.5~77.8)、GCS合計8以下が75.8%(62.4~85.5)/39.9%(26.9~54.5)であった。

 CT所見の感度/特異度は、脳底槽の消失が85.9%(58.0~96.4)/61.0%(29.1~85.6)、あらゆる正中偏位が80.9%(64.3~90.9)/42.7%(24.0~63.7)、10mm以上の正中偏位が20.7%(13.0~31.3)/89.2%(77.5~95.2)であった。超音波検査によるONSD測定のROC曲線下面積(AUROC)は、0.94(0.91~0.96)であった。

 また、TCD-PIのAUROCは個々の研究で0.55~0.72であり、頭蓋内圧亢進の検出力は乏しいことが示唆された。

(医学ライター 吉尾 幸恵)