HFrEFへのsacubitril-バルサルタンは動脈スティフネスを改善?/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2019/09/27

 

 左室駆出率(LVEF)が低下した心不全(HFrEF)患者において、sacubitril/バルサルタンはエナラプリルと比較し中心動脈スティフネスを有意に改善しないことが示された。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のAkshay S. Desai氏らが、sacubitril/バルサルタンによるHFrEFの治療が中心動脈スティフネスおよび心臓リモデリングを改善するかについて検証した無作為化二重盲検臨床試験「EVALUATE-HF試験」の結果を報告した。sacubitril/バルサルタンは、エナラプリルと比較しHFrEF患者の心血管死および心不全による入院を減少させることが示されており、血行動態や心臓リモデリングの改善と関連する可能性があった。著者は「今回の結果は、HFrEFに対するsacubitril/バルサルタンの作用メカニズムを理解するうえで手掛かりとなるだろう」とまとめている。JAMA誌オンライン版2019年9月2日号掲載の報告。

HFrEF患者約460例でsacubitril/バルサルタンvs.エナラプリル
 研究グループは、2016年8月17日~2018年6月28日に米国の85施設にて、LVEF 40%以下の心不全患者464例を、sacubitril/バルサルタン群(目標用量:97/103mg、1日2回、231例)とエナラプリル群(同10mg、1日2回、233例)に無作為に割り付け、12週間投与した(2019年1月26日追跡調査終了)。

 主要評価項目は、中心動脈スティフネスの尺度である大動脈の特性インピーダンス(Zc)の、ベースラインから12週までの変化とした。また、NT-proBNP、LVEF、左室全体の長軸方向ストレイン(global longitudinal strain:GLS)、僧帽弁輪弛緩速度、僧帽弁E/e'比、左室収縮末期容積係数(LVESVI)、左室拡張末期容積係数(LVEDVI)、左房容積係数および心室血管整合比の、ベースラインから12週までの変化も副次評価項目として事前に規定された。

特性インピーダンスの変化に両群間で有意差なし
 464例(平均[±SD]年齢67.3±9.1歳、女性23.5%)のうち、427例が試験を完遂した。

 Zcは、12週時においてsacubitril/バルサルタン群では低下し、エナラプリル群では増加したが、ベースラインからの変化は両群間で有意差は確認されなかった(群間差:-2.2dyne×s/cm5、95%信頼区間[CI]:-17.6~13.2、p=0.78)。

 副次評価項目9項目のうち、LVEFを含む4項目(GLS、僧帽弁輪弛緩速度、心室血管整合比)でベースラインからの変化に有意な群間差はなかった。残りの、左房容積係数、LVEDVI、LVESVI、僧帽弁E/e'などの項目は、エナラプリル群よりsacubitril/バルサルタン群でベースラインからの減少が大きいことが示された。

 有害事象については、低血圧症(sacubitril/バルサルタン群3.9%、エナラプリル群1.7%)も含め両群で類似していた。

(医学ライター 吉尾 幸恵)