成人軽症~中等症喘息の発作治療、ICS/LABA vs.SABA/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2019/09/09

 

 軽症~中等症の成人喘息患者の治療では、症状緩和のためのブデソニド/ホルモテロール配合薬の頓用は、低用量ブデソニド維持療法+テルブタリン頓用に比べ、重度喘息増悪の予防効果が優れることが、ニュージーランド・Medical Research Institute of New ZealandのJo Hardy氏らが行ったPRACTICAL試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年8月23日号に掲載された。軽症の成人喘息患者では、発作時の単剤治療としての吸入コルチコステロイド(ICS)と即効性長時間作用性β2刺激薬(LABA)の配合薬は、短時間作用性β2刺激薬(SABA)による発作時治療に比べ、重度増悪の抑制効果が高いと報告されている。

ICS/LABAとSABAの有用性を比較する無作為化試験

 本研究は、ニュージーランドの15施設が参加した多施設共同非盲検無作為化対照比較試験であり、ブデソニド/ホルモテロール配合薬よる発作時治療と、低用量ブデソニド維持療法+テルブタリン(SABA)頓用の併用治療の有用性を比較する目的で実施された(ニュージーランド保健研究会議[HRC]の助成による)。

 対象は、年齢18~75歳、患者が自己申告し、医師により喘息と診断され、割り付け前の12週間に発作時SABA治療単独、または発作時SABA治療+低~中用量の吸入コルチコステロイドによる維持療法を行っていた患者であった。

 被験者は、ブデソニド/ホルモテロール配合薬(1噴霧中にそれぞれ200μgおよび6μgを含有、症状緩和のために必要時に1吸入)による治療を行うICS/LABA群、またはブデソニド(1噴霧中に200μg含有、1回1吸入、1日2回)+テルブタリン(1噴霧中に250μg含有、症状緩和のために必要時に2吸入)による治療を行うSABA群に、1対1の割合で無作為に割り付けられた。患者は、割り付け時と4、16、28、40、52週時に受診した。

 主要アウトカムは、intention to treat集団における患者1例当たりの重度増悪の年間発生とした。重度増悪は、喘息による3日間以上の全身性コルチコステロイドの使用、もしくは全身性コルチコステロイドを要する喘息による入院または救急診療部への受診と定義された。

ICS/LABA群の重度増悪が31%減少、症状は同等でステロイド減量

 2016年5月4日~2017年12月22日の期間に885例が登録され、ブデソニド/ホルモテロール配合薬頓用のICS/LABA群に437例(平均年齢43.3[SD 15.2]歳、女性56%)が、ブデソニド維持療法+テルブタリン頓用のSABA群には448例(42.8[16.7]歳、54%)が割り付けられた。

 1例当たりの重度増悪の年間発生は、ブデソニド/ホルモテロール配合薬頓用のICS/LABA群がブデソニド維持療法+テルブタリン頓用のSABA群に比べ、31%有意に低かった(絶対発生率:0.119 vs.0.172、相対値:0.69、95%信頼区間[CI]:0.48~1.00、p=0.049)。

 重度増悪の初発までの期間は、ブデソニド/ホルモテロール配合薬頓用のICS/LABA群が、ブデソニド維持療法+テルブタリン頓用のSABA群よりも長かった(HR:0.60、95%CI:0.40~0.91、p=0.015)。また、中等度~重度増悪の初発までの期間も、ブデソニド/ホルモテロール配合薬頓用のICS/LABA群のほうが長かった(0.59、0.41~0.84、p=0.004)。

 治療失敗による投与中止の割合は、両群間に差はみられなかった(ブデソニド/ホルモテロール配合薬頓用のICS/LABA群9例、ブデソニド維持療法+テルブタリン頓用のSABA群11例、相対リスク:0.84、95%CI:0.35~2.00、p=0.69)。また、five-question version of the Asthma Control Questionnaire(ACQ-5、前週の喘息症状に関する5つの質問への回答で、0[障害なし]~6[最大の障害]点に分類)のスコアにも、すべての評価時点で両群間に差はなかった(平均差:0.06、-0.005~0.12、p=0.07)。

 ブデソニドの平均1日用量は、ブデソニド/ホルモテロール配合薬頓用のICS/LABA群のほうが少なかった(差:-126.5μg/日、95%CI:-171.0~-81.9、p<0.001)。

 1件以上の有害事象を発現した患者は、ブデソニド/ホルモテロール配合薬頓用群が385例(88%)、ブデソニド維持療法+テルブタリン頓用群は371例(83%)であった。最も頻度の高い有害事象は、両群とも鼻咽頭炎だった(154例[35%]、144例[32%])。

 著者は「これらの知見は、吸入コルチコステロイド/ホルモテロール配合薬による発作時治療は、軽症喘息患者への低用量吸入コルチコステロイド毎日投与の代替レジメンであるとする2019 Global Initiative for Asthma(GINA)の推奨を支持するものである」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 小林 英夫( こばやし ひでお ) 氏

防衛医科大学校 内科学講座 准教授

J-CLEAR推薦コメンテーター