ボセンタンは軽度症候性の肺動脈高血圧にも有効

提供元:ケアネット

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公開日:2008/07/03

 



エンドセリン受容体拮抗薬ボセンタン(商品名:トラクリア)は、進行性のみならず軽度症候性の肺動脈高血圧(PAH)にも有効なことが、イタリアBologna大学心臓病研究所のNazzareno Galie氏らが実施した無作為化試験(EARLY試験)で明らかとなった。PAHの治療はおもに進行性病変について検討されており、軽症例に関する研究は少ないという。Lancet誌2008年6月21日号掲載の報告。

WHO FC IIの軽度PAHを対象とした二重盲検プラセボ対照試験




EARLY試験は、12歳以上のWHO機能分類(FC)IIの軽症PAH(6分間歩行距離が正常予測値の80%未満あるいは500m未満、Borg呼吸困難インデックスが2以上)を対象とした多施設共同二重盲検プラセボ対照試験であり、21ヵ国52施設が参加した。

185例が登録され、中央統合音声認識システムを介して6ヵ月の二重盲検治療期間中にボセンタン群に93例、プラセボ群に92例が無作為に割り付けられた。主要評価項目は、ベースラインとの比較における6ヵ月後の肺血管抵抗性および6分間歩行距離のベースラインから6ヵ月目までの変化とした。

ボセンタン群で肺血管抵抗性が有意に改善




肺血管抵抗性の解析は168例(ボセンタン群80例、プラセボ群88例)で、6分間歩行距離の解析は177例(86例、91例)で行われた。ベースラインとの比較における6ヵ月後の肺血管抵抗性の平均値は、ボセンタン群が83.2%、プラセボ群は107.5%であった(治療効果:-22.6、95%信頼区間:-33.5~-10.0、p<0.0001)。

平均6分間歩行距離は、ボセンタン群が11.2m(95%信頼区間:-4.6~27.0)延長したのに対し、プラセボ群では7.9m(-24.3~8.5)短縮しており、平均治療効果は19.1m(3.6~41.8、p=0.0758)であった。

ボセンタン群の12例(13%)およびプラセボ群の8例(9%)で重篤な有害事象が報告され、ボセンタン群では失神が、プラセボ群では右心不全がもっとも多くみられた。

Galie氏は、「EARLY試験の結果は、ボセンタン治療はWHO FC IIの軽症肺動脈高血圧に対し有効である可能性を示唆する」と結論している。

(菅野守:医学ライター)