旅行者下痢の予防に大腸菌由来毒素含有ワクチンパッチが有効

提供元:ケアネット

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公開日:2008/06/26

 

旅行者下痢に対し、腸管毒素原性大腸菌(ETEC)由来の易熱性毒素(LT)を含有する経皮吸収型のワクチンが有効なことが、IOMAI Corporation(米国、Gaithersburg)のSarah A Frech氏らが健常な旅行者を対象に行った第II相試験で示された。ETECは、流行地への旅行者や開発途上国の幼児の下痢の主要原因である。毎年2,700万人の旅行者および2億1,000万人の小児が急性の下痢を発症し、38万人の子どもが死亡しているという。Lancet誌2008年6月14日号掲載の報告。

メキシコあるいはグアテマラへの旅行者を対象とした無作為化第II相試験




本研究は、メキシコあるいはグアテマラへの旅行を計画している18~64歳の健常成人のうち、米国の地域ワクチンセンターにアクセスした者を対象に行われた無作為化第II相試験である。割り付けには中央無作為化コードを用い、参加者および各施設のスタッフには割り付け状況はマスクされた。

主要エンドポイントはETEC性下痢の発症率およびワクチンパッチから放出されたLTの安全性の評価とした。副次エンドポイントは旅行者下痢およびETECに対するワクチンの有効性などとした。

参加者は旅行前に2~3週間隔で2枚のパッチを用いてワクチンを接種された。パッチにはLT 37.5μgあるいはプラセボが含有された。参加者は旅行先の国でカード形式の日誌に排便量を記録し、下痢を起こした場合は病原菌同定のためにサンプルを提出した。下痢の重症度は24時間における軟便の排便回数で評価した(軽度:3回、中等度:4、5回、重度:6回以上)。

なお、旅行者下痢は一般に18回ほどの軟便の排便回数を伴って4~5日間持続し、通常、悪心・嘔吐、腹部疝痛、衰弱、脱水をきたす。

ワクチンパッチは重度の下痢を有意に予防、罹病期間、軟便排便回数を低減




2006年5~12月に201人が登録され、そのうち178人が2回のワクチン接種を受けてメキシコおよびグアテマラに旅行し、170人が解析の対象となった。プラセボ群の111人のうち24人(22%)が下痢を発症したが、ETEC性の下痢は11人(10%)であった。

ワクチンは安全であり、免疫原性は発揮されていた。ワクチン群の59人においては、中等度~重度の下痢(予防効果:75%、p=0.0070)および重度の下痢(予防効果:84%、p=0.0332)に対する有意な予防効果が認められた。下痢をきたしたワクチン群の症例は、プラセボ群に比べ罹病期間が有意に短く(0.5日 vs 2.1日、p=0.0006)、軟便の排便回数が有意に少なかった(3.7回 vs 10.5回、p<0.0001)。

Frech氏は、「旅行者下痢は一般的な疾病であり、旅行先での下痢の10%は腸管毒素原性大腸菌(ETEC)によるものである。ワクチン貼付薬は安全かつ実行可能であり、旅行者下痢の発症頻度および重症度を抑制する効果を有する」と結論している。

また、同氏は「経皮的パッチは簡便かつ注射器不要で、低温流通体系(cold chain)を必要とせず、旅行者および途上国での使用に適するようデザインされている。今回確認された効果は第III相試験で検証する必要がある」とコメントしている。

(菅野守:医学ライター)