静脈血栓塞栓症リスクを経口エストロゲンは増大するが経皮エストロゲンは安全

提供元:ケアネット

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公開日:2008/06/13

 

ホルモン補充療法は静脈血栓塞栓症のリスクを増大するのか。フランス国立保健医学研究所(INSERM)心血管疫学部門のMarianne Canonico氏らによるシステマティックレビュー&メタ解析が行われ、「経口エストロゲンはリスクを増大する。経皮エストロゲンは安全なようだ」と報告された。BMJ誌2008年5月31日号(オンライン版2008年5月20日号)掲載より。

経口エストロゲンはリスクを増大、しかも服薬初期ほどリスク高




Medlineから選定されたレビュー対象は8つの観察研究と9つの無作為化試験。いずれも静脈血栓塞栓症が報告されたホルモン補充療法に関するスタディである。解析はχ二乗検定、I二乗検定を用いて行われた。静脈血栓塞栓症の全リスクは、固定効果モデルもしくは変量効果モデルで評価された。

まず8つの観察研究のメタ解析では、経口エストロゲンはリスクを増大するが、経皮エストロゲンは増大しないとの結果が得られた。

エストロゲン非服用者との比較による、静脈血栓塞栓症の初回発症オッズ比は、経口エストロゲン服用中の者の場合は2.5 (95%信頼区間:1.9~3.4)に対し、経皮エストロゲン服用中の者は1.2(0.9~1.7)だった。

また現在は経口エストロゲンを服用していない者のリスクを一度も服用したことのない者のリスクと比較した場合、程度は同じではなかった。

経口エストロゲン服用中の女性の静脈血栓塞栓症リスクは、服薬期間が1年以上の場合のオッズ比は2.1(1.3~3.8)、これに対して最初の1年は4.0(2.9~5.7)で、より高かった(P<0.05)。

リスクに関して、経口エストロゲン支持者(オッズ比2.2:1.6~3.0)と不支持者(2.6:2.0~3.2)との間に、目立った違いは確認されなかった。

経皮エストロゲンはリスクを増大しないようだ




9つの無作為化試験の結果でも、経口エストロゲン服用中の女性でのリスク増大が確認された(オッズ比2.1:1.4~3.1)。

経口エストロゲンと血栓形成の突然変異あるいは肥満症との組み合わせは、さらにリスクを強化した。一方経皮エストロゲンはハイリスクの女性でもリスクをさらに増すことはなかった。

以上の結果からCanonico氏は、「経口エストロゲンは静脈血栓塞栓症のリスクを増大する。特に服薬開始1年目の危険度が高い。経皮エストロゲンは血栓リスクに関して経口より安全なようだ」と結論し、「より多くのデータを集め、さまざまなホルモン療法について、特にプロゲストゲンの異なるタイプに着目してリスクの違いを検討する必要がある」とまとめた。