閉経前の子宮摘出、卵巣温存で全死亡抑制/BMJ

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2017/02/22

 

 閉経前女性の子宮摘出術時に卵巣を温存すると、2つの卵巣を切除した場合に比べ、全死因死亡が抑制され、虚血性心疾患やがんによる死亡も低減するとの研究結果が、BMJ誌2017年2月6日号に掲載された。研究を行った英国・バーミンガム大学病院NHSファウンデーション・トラストのJemma Mytton氏らは、「閉経前女性には、卵巣を2つとも切除すれば卵巣がんを予防できるが、卵巣がんより発症率の高いがんを含め、これらのリスクが増加することを伝えるべきである」と指摘している。

約3分の1で両側卵巣切除
 本研究は、子宮摘出術時の両側卵巣切除と1つ以上の卵巣の温存では、アウトカムに違いがあるかを検討するレトロスペクティブな全国調査である(責任著者は英国国立衛生研究所[NIHR]の研究助成を受けた)。

 英国のHospital Episode Statisticsのデータベースを用い、2004年4月~2014年3月に良性疾患で子宮摘出術を受けた35~45歳の女性11万3,679例のデータを解析した。

 卵巣温存群は7万6,581例(67.4%)、両側卵巣切除群は3万7,098例(32.6%)で、年齢中央値はそれぞれ41歳(IQR:39~43)、42歳(同:40~44)であった。平均フォローアップ期間は6.2(SD 2.84)年だった。

 人口統計学的特性は両群間に大きな違いがみられた。たとえば、ウエストミッドランド地方では、温存術施行率は10.7%、両側切除術施行率は16.3%であった(p<0.001)。ロンドン市では温存術のほうが高率だった(9.7% vs.5.1%)。

全死因死亡は、温存群が有意に優れる
 卵巣温存群は、子宮摘出術後の虚血性心疾患による入院率が、両側卵巣切除群に比べ有意に低かった(1.60 vs.2.02%、絶対差:0.42%、補正ハザード比[HR]:0.85、95%信頼区間[CI]:0.77~0.93、p<0.001)。

 がんに関連する術後の入院率も、卵巣温存群が有意に低かった(2.80 vs.3.49%、絶対差:0.69%、補正HR:0.83、95%CI:0.78~0.89、p<0.001)。

 乳がんは、両側卵巣切除群のほうが良好で(1.02 vs.0.97%、p<0.001)、他の生殖関連がんには差がなかった(0.09 vs.0.12%、p=0.14)が、肺がん(0.12 vs.0.19%、p=0.01)、結腸がん(0.11 vs.0.24%、p<0.001)、膀胱がん(0.06 vs.0.12%、p=0.01)、その他のがん(1.93 vs.2.44%、p<0.001)は、卵巣温存群のほうが、有意に術後入院率が低かった。

 卵巣がんの発症率は、当初、両側卵巣切除群のほうが増加したが、経時的に差が縮まり、長期的には卵巣温存群よりも低くなると予測された。

 全死因死亡は、卵巣温存群が両側卵巣切除群に比し有意に優れた(0.60 vs.1.01%、絶対差:0.41%、補正HR:0.64、95%CI:0.55~0.73、p<0.001)。心疾患関連死(0.03 vs.0.06%、補正HR:0.50、0.28~0.90、p=0.02)およびがん関連死(0.31 vs.0.63%、0.54、0.45~0.65、p<0.001)も、卵巣温存群が有意に低率であった。また、自殺(未遂、完遂)には両群間に差を認めなかった。

 さらに、傾向スコアマッチングを行い、主要なアウトカムについてCox回帰を用いた解析を行ったところ、実質的にこれらと同様の結果が得られた。

 以上の知見は、米国の看護師健康調査(Nurses’ Health Study)で示された両側卵巣摘出術と虚血性心疾患、がん死、全死因死亡との関連と一致するものだという。

(医学ライター 菅野 守)