アスピリン・NSAIDsと大腸がんリスクの関連メカニズム/JAMA

提供元:ケアネット

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公開日:2015/04/03

 

 遺伝子と環境の相互作用を考慮したゲノムワイド研究で、アスピリンと非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の単独または両薬の常用と、大腸がんリスク低下との関連が遺伝子レベルで明らかにされた。米国・インディアナ大学のHongmei Nan氏らが報告した。検討により、染色体12と15の一塩基多型(SNP)で、常用とリスクとの関連は異なることが示され、遺伝子型によっては常用でリスクが高まる人がいることが明らかにされた。所見を受けて著者は「被験者を追加した検討で今回の所見が確認されれば、ターゲットを絞った大腸がんの予防戦略を促進するだろう」と述べている。JAMA誌2015年3月17日号掲載の報告より。

遺伝子×環境相互作用のゲノムワイド分析
 研究グループは、先行研究でアスピリンとNSAIDsの使用と大腸がんリスク低下との関連が示されているが、その関連のメカニズムは不明であったことから、共通の遺伝マーカーを特定する検討を行った。大腸がんリスクに関して、アスピリンやNSAIDs(もしくはその両方)の常用とSNPとの遺伝子×環境相互作用を調べた。

 検討は症例対照研究にて行われた。米国、カナダ、オーストラリア、ドイツで1976~2003年に開始され1976~2011年に大腸がん診断の確認が行われた、5件のケースコントロールと5件のコホート研究のデータを包含した。症例群は8,634例、適合対照群8,533例で、被験者はすべてヨーロッパ系であった。

 ゲノムワイドSNPデータと、アスピリン・NSAIDsの常用に関する情報、その他リスク因子を調べ、大腸がんを主要評価項目として分析した。

遺伝子型によってはリスクが高くなる人がいることが判明
 アスピリン・NSAIDsの常用は非常用と比べて、大腸がんリスク低下との関連が確認された(有病率:症例群28%[2,455/8,634例] vs. 適合対照群38%[3,221/8,553例]、オッズ比[OR]:0.69、95%信頼区間[CI]:0.64~0.74、p=6.2×10-28)。

 通常のロジスティック回帰分析の結果、MGST1遺伝子に近在する染色体12p12.3のSNP rs2965667が、アスピリン・NSAIDs常用との有意な相互作用を示した(交互作用のp=4.6×10-9)。また、そのうちSNP rs2965667-TT遺伝子型を有する人では、アスピリン・NSAIDs常用と大腸がんリスクの低下がみられたが(有病率28% vs. 38%、OR:0.66、95%CI:0.61~0.70、p=7.7×10-33)、まれに存在するTAまたはAA遺伝子型を有する人(4%)では、常用により大腸がんリスクが高まることがみられた(有病率:35% vs. 29%、OR:1.89、95%CI:1.27~2.81、p=0.002)。

 症例のみ相互作用分析では、IL16遺伝子に近在する染色体15q25.2のSNP rs16973225が、アスピリン・NSAIDs常用との有意な相互作用を示した(交互作用のp=8.2×10-9)。また、rs16973225-AA遺伝子型を有する人では、アスピリン・NSAIDs常用と大腸がんリスクの低下がみられたが(有病率:28% vs. 38%、OR:0.66、95%CI:0.62~0.71、p=1.9×10-30)、一般的ではないが有する人がいるACまたはCC遺伝子型の人(9%)では、常用と大腸がんリスクとの関連はみられなかった(有病率36% vs. 39%、OR:0.97、95%CI:0.78~1.20、p=0.76)。

(武藤まき:医療ライター)

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コメンテーター : 上村 直実( うえむら なおみ ) 氏

国立国際医療研究センター国府台病院 名誉院長

東京医科大学 消化器内視鏡学講座 兼任教授

J-CLEAR評議員