糖尿病合併症、20年間で発生率が大幅に低下:米国/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2014/04/30

 

 1990~2010年の20年間の糖尿病合併症について調べた結果、発生率が大幅に低下したことが明らかにされた。米国疾病管理予防センター(CDC)のEdward W. Gregg氏らによる報告で、最も低下が大きかったのは急性心筋梗塞で約7割、高血糖緊急症による死亡は6割強減少し、脳卒中、下肢切断もほぼ半減していた。しかし、一方で糖尿病の有病率は上昇を続けているため、著者は「糖尿病の疾病負担は大きいままである」と指摘している。NEJM誌2014年4月17日号掲載の報告より。

米国調査データで、1990年と2010年の5つの合併症を比較
 ここ数十年で糖尿病の予防ケアは大きく改善されている。著者らはその影響を調べるため、1990~2010年の糖尿病関連の合併症の発生率の傾向を分析した。

 分析には、全米健康インタビュー調査、全米退院調査、米国腎臓データシステム、米国人口動態統計からのデータを用いた。2000年時点の米国人口で標準化した年齢で、1990年と2010年との下肢切断、末期腎不全(ESRD)、急性心筋梗塞、脳卒中、高血糖緊急症による死亡に関する発生を比較検討した。

急性心筋梗塞の発生率は-67.8%、糖尿病患者
 20年間で、検討した5項目すべての発生率が低下していた。最も大きく低下していたのは、急性心筋梗塞-67.8%(95%信頼区間[CI]:-76.2~-59.3%)で、高血糖緊急症による死亡が-64.4%(同:-68.0~-60.9%)、そして脳卒中-52.7%(同:-64.4~-40.9%)、下肢切断-51.4%(同:-68.2~-34.5%)と続いた。発生率の低下が最も小さかったのはESRDで-28.3%(同:-34.6~-21.6%)だった。

 発生率の低下は、非糖尿病成人よりも糖尿病成人で大きかった(例:20年間の非糖尿病成人の急性心筋梗塞発生率の低下は-31.2%、脳卒中は-5.5%など)。そのため、糖尿病成人の非糖尿病成人に対する糖尿病関連の相対リスクは縮小していた。たとえば、急性心筋梗塞の1990年における両者間の相対リスクは3.8であったが、2010年には1.8となっていた。

 全体集団でみると、有病率の変化が合併症の発生率に影響していることがみてとれた。急性心筋梗塞の発生率(1万人当たり-2.7例)、高血糖緊急症による死亡率(同-0.07例)は低下していたが、下肢切断(同-0.01例)、脳卒中(同0.3例)、ESRD(同1.0例)の発生率は低下していなかった。

(武藤まき:医療ライター)