在胎不当過小に関わる胎盤の異常をドプラ超音波検査で検出

胎盤と胎児の血流を超音波で測定することで、在胎不当過小(small for gestational age;SGA)に関連する胎盤の異常を見つけられる可能性のあることが、アムステルダム大学メディカルセンター(オランダ)産科学准教授のWessel Ganzevoort氏らの研究から明らかになった。詳細は、「British Journal of Obstetrics & Gynaecology」に2月5日掲載された。
Ganzevoort氏らの説明によると、胎児の約10%は母親の胎内にいる時点で超音波検査によりSGAと判定される。SGAは、同じ在胎期間で生まれた新生児の標準的な体重分布の10パーセンタイル未満に該当する新生児の状態を指す。SGAであっても健康であれば、特別な介入は必要ない。しかし、胎盤に異常がある場合には対処する必要があり、分娩誘発が必要となることもある。Ganzevoort氏は、「こうしたことから、胎盤異常を原因とするSGAの胎児は、追跡が極めて重要だ」と言う。
胎児の成長は通常、超音波検査で確認・追跡されるが、今回の研究では、臍帯(へその緒)の中の血管の抵抗性をより詳細に観察するためにドプラ超音波が用いられた。Ganzevoort氏らによると、ドプラ超音波によって医師は胎盤の状態について重要な手がかりを得ることができるとともに、胎児の脳の血流を捉えることもできる。脳への血流量の異常は胎盤の機能に異常がある可能性を示唆する。Ganzevoort氏らは、「ドプラ超音波を用いることで、医師は胎児がより緊密なモニタリングを必要とするかどうかの判断が可能になる」と説明している。
19施設の二次および三次医療センターで実施されたこの研究では、SGA児における中大脳動脈と臍帯動脈の血流速度の比(umbilicocerebral ratio;UCR)と不良な周産期アウトカムとの関連を検討し、早期分娩がアウトカムに与える影響が調査された。対象者は、1)ドプラ超音波検査でUCRが2回連続で異常値を示し、推定胎児体重(EFW)が妊娠35週目で3パーセンタイル以下、または妊娠36週目で10パーセンタイル以下、2)UCRが一度または断続的に異常値を示した、3)UCRに異常なし、に分類された(ドプラ分類)。1)に分類された妊婦はさらに、妊娠34週で分娩を誘発する群と妊娠37週目まで経過観察する群にランダム化されたが、その途中でランダム化される対象者の数が少な過ぎるため、試験は打ち切られた。ランダム化された妊婦を対象にした解析からは、EFWの中央値倍数(MoM)、妊娠高血圧腎症、およびドプラ分類が、不良な周産期アウトカムの複合と独立して関連することが示された。
Ganzevoort氏は、「こうした体格の小さな胎児のケア計画にドプラ超音波検査を組み込むことで、出産に関わる問題のリスク上昇を検出しやすくなり、モニタリングにつなげやすくなる」と同医療センターのニュースリリースの中で述べ、「ドプラ超音波検査の測定結果が正常な低体重の胎児には、それほど集中的なモニタリングは必要ないという判断ができるため、必要最低限の介入だけで自然分娩を行える可能性が高まる」としている。
なお、Ganzevoort氏らは今回の研究の中で、胎盤機能の異常によって危険な状態にさらされていると考えられる胎児の転帰が、妊娠37週未満での分娩誘発により改善するかどうかについても検討したが、転帰は改善されないことが明らかになった。そのため、同氏らは、こうした胎児は胎内により長い期間とどまることが健康の点では最善なのではないかとの見解を示している。
[2024年2月6日/HealthDayNews]Copyright (c) 2024 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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