円形脱毛症の経口治療薬を米FDAが承認

提供元:HealthDay News

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公開日:2022/07/08

 

 米食品医薬品局(FDA)は6月13日、重症の円形脱毛症の成人に対する経口治療薬として、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬の一種であるバリシチニブ(商品名オルミエント)を承認したことを発表した。円形脱毛症に対する、局所ではなく全身性の治療薬としては、同薬剤が初めての承認である。

 円形脱毛症は、体が自身の毛包を誤って攻撃してしまうことで生じる脱毛を特徴とする自己免疫疾患である。JAK阻害薬のバリシチニブは、炎症性サイトカインの細胞内でのシグナル伝達に関わる酵素であるヤヌスキナーゼの働きを阻害することで炎症を抑制する。

 バリシチニブの安全性と有効性は、6カ月以上にわたって頭皮の50%以上の脱毛が見られる円形脱毛症患者を対象にした、2件のプラセボ対照二重盲検化ランダム化比較試験(Trial AA-1、Trial AA-2)の結果を基に確認された。試験参加者は、バリシチニブ(2mg/日、または4mg/日)、またはプラセボを投与する群にランダムに割り付けられた。主要評価項目は両試験とも、36週間後に毛髪による頭皮の被覆率80%以上を達成した患者の割合とした。

 その結果、主要評価項目を達成した患者は、Trial AA-1ではバリシチニブ2mg/日投与群(184人)の22%、4mg/日投与群(281人)の35%、Trial AA-2ではバリシチニブ2mg/日投与群(156人)の17%、4mg/日投与群(234人)の32%であったのに対し、プラセボ群ではTrial AA-1(189人)で5%、Trial AA-2(156人)で3%にとどまっていた。

 バリシチニブの最も一般的な副作用は、上気道感染症、頭痛、ざ瘡(にきび)、脂質異常症、血中クレアチンホスホキナーゼ増加、尿路感染症、肝酵素値上昇、毛包の炎症、倦怠感、下気道感染症、悪心、カンジダ症、貧血、好中球減少症、腹痛、帯状疱疹、および体重増加である。

 バリシチニブは、他のJAK阻害薬や免疫調整生物製剤、シクロスポリンなどの強力な免疫抑制剤と併用することはできない。また、警告や注意事項として、重篤な感染症、死亡、悪性腫瘍、主要心血管イベント、血栓症などが生じる可能性のあること、同薬剤による治療中および治療後の感染症の兆候や症状を綿密にモニタリングするべきこと、治療前の活動性結核の症状の評価と潜在性結核感染症の有無を確認する必要があること、さらに、ウイルスの再活性化の兆候についても精査する必要があることなどが述べられている。

 FDA医薬品評価研究センター(CDER)の皮膚科歯科部門でディレクターを務めるKendall Marcus氏は、「安全で効果的な治療選択肢へのアクセスは、重症の円形脱毛症に悩まされている多数の米国人にとって極めて重要だ。今回の承認は、重症の円形脱毛症患者が抱えるアンメットニーズを満たすのに役立つだろう」と話している。

 なお、バリシチニブの承認は、イーライリリー・アンド・カンパニーに対して与えられた。

[2022年6月14日/HealthDayNews]Copyright (c) 2022 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら