大規模コホート研究で、市中発症敗血症患者に対する初期輸液療法として、来院6時間以内に30mL/kg以上の輸液を実施した場合、30日死亡率の低下と関連することが示された。とくに低灌流例だけでなく、中等度乳酸上昇例でも死亡率低下が認められ、従来は輸液過剰が懸念され十分な輸液が控えられてきた重度心・腎疾患併存例でも有害性を示す結果は得られず、むしろ輸液量の増加に伴い死亡率が低下する可能性が示唆された。Intermountain Medical Center(米国・ユタ州)のElizabeth S. Munroe氏らによる本研究はJAMA Network Open誌2026年6月12日号に掲載された。
敗血症誘発性低灌流では、「Surviving Sepsis Campaign(SSC)」ガイドラインで最初の3時間以内に30mL/kg以上の晶質液投与が推奨されている。一方、心不全や末期腎不全など体液過剰リスクの高い患者では十分な輸液がためらわれることが少なくない。また、乳酸値18~36mg/dLの中等度上昇例についても、積極的な輸液の有用性は十分に確立されていなかった。
本研究では、米国ミシガン州67施設の敗血症レジストリを用い、市中発症敗血症で入院した成人(退院日は2021年12月~2025年1月)4万3,321例を解析した。このうち入院3時間以内に低血圧または乳酸18mg/dL以上を認め、輸液適応がある2万5,481例を対象とした。
対象患者は、1)低灌流・重度併存疾患なし、2)低灌流・重度併存疾患あり、3)中等度乳酸上昇・重度併存疾患なし、4)中等度乳酸上昇・重度併存疾患ありの4群に分類された。主要評価項目は30日死亡率であり、入院6時間以内の総輸液量が30mL/kg以上か未満かで比較した。解析では患者背景を調整した逆確率重み付け法と多変量解析を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・低灌流・重度併存疾患なし群では、30mL/kg以上の輸液を受けた群の調整後30日死亡率は26.0%で、30mL/kg未満群の30.4%より4.4%ポイント低かった。中等度乳酸上昇・重度併存疾患なし群でも12.0%対13.9%と1.8%ポイントの有意な死亡率低下が認められた。
・一方、低灌流・重度併存疾患あり群および中等度乳酸上昇・重度併存疾患あり群では、30mL/kg以上群で死亡率は低い傾向を示したものの、有意差には至らなかった。ただし、輸液量を連続変数として解析したスプラインモデルでは、低灌流・重度併存疾患あり群において輸液量の増加に伴って死亡率が低下する傾向が確認され、積極的輸液による明らかな不利益は示されなかった。中等度乳酸上昇・重度併存疾患あり群では明確な関連は認められなかった。
・実体重、理想体重、補正体重を用いる3種類の体重換算方法でも結果は一貫しており、どの計算法でも30mL/kg以上の初期輸液は良好な転帰と関連していた。
著者らは、「敗血症初期輸液30mL/kgは従来考えられていたより幅広い患者集団で有益である可能性がある」と考察している。とくに中等度乳酸上昇例や重度心・腎疾患併存例では、輸液不足が予後悪化につながる可能性があり、輸液制限を一律に適応すべきではないと指摘する。一方、本研究は観察研究であり、残余交絡の可能性は否定できず、極端な心機能低下例などへの適応については今後の前向き試験による検証が必要としている。今回の結果は、敗血症初期蘇生における30mL/kg輸液というSSC推奨を支持するとともに、これまで慎重投与とされてきた患者群にも適応を再考する根拠となる可能性がある。
(ケアネット 杉崎 真名)