Surviving Sepsis Campaignなどの国際的なガイドラインでは、敗血症による低血圧が確認されてから3時間以内の体重1kg当たり少なくとも30mLの静脈内輸液を弱く推奨しているが、昇圧薬投与の開始時期については具体的な推奨を行っていないという。オーストラリア・モナシュ大学のSandra L. Peake氏らは「ARISE FLUIDS試験」において、敗血症性ショックで救急診療部を受診した成人患者では、輸液量を制限し早期に昇圧薬を投与するアプローチは、輸液量を多くし昇圧薬の投与を遅らせるアプローチと比較して、90日時点での非入院生存日数の増加にはつながらないことを示した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2026年6月11日号で報告された。
3ヵ国の研究者主導型無作為化試験
ARISE FLUIDS試験は、3ヵ国51施設で実施した研究者主導型の非盲検無作為化試験(Australian National Health and Medical Council Medical Research Future Fundなどの助成を受けた)。2021年10月~2025年11月に、敗血症性ショックで救急診療部に搬送され、臨床的に感染症が疑われ、少なくとも1,000mLの輸液のボーラス投与を行っても収縮期血圧90mmHg未満または平均動脈圧65mmHg未満の成人患者を登録した。
被験者963例を、輸液量を制限し早期に昇圧薬投与を行う群(昇圧薬群481例:年齢中央値68歳、男性58.4%)、または多量の輸液を行い昇圧薬投与を遅らせて開始する群(輸液群482例:69歳、62.7%)に無作為に割り付けた。これらの介入は、救急診療部またはICUで最短6時間、最長24時間行った。
主要アウトカムは、無作為化から90日目の追跡調査までの非入院生存日数とし、初回入院期間中、またはその後の再入院期間中に、患者が急性期病院に入院していなかった日数と定義した。無作為化から90日以内に死亡した患者は、非入院生存日数を0日とした。
無作為化前の輸液量は同程度
無作為化前の輸液量中央値は、昇圧薬群で1,500mL(四分位範囲[IQR]:1,000~1,750)、輸液群で1,500mL(IQR:1,000~1,850)であった。昇圧薬群の57例(11.9%)と輸液群の41例(8.5%)で、無作為化前に昇圧薬の投与を開始していた。主な感染部位は両群とも気道および尿路だった。輸液群の3例が主要アウトカムの追跡から脱落した。
無作為化から24時間以内に昇圧薬の投与を受けた患者の割合は、輸液群が67.6%であったのに対し、昇圧薬群は86.5%と、より高率であった(群間差:18.9%ポイント、95%信頼区間[CI]:13.3~24.5)。昇圧薬投与開始までの時間中央値は、輸液群の1.4時間に比べ昇圧薬群は0.4時間と短かった(群間差:-1.0時間、95%CI:-1.2~-0.9)。
また、無作為化から24時間後までの静脈内輸液量は、輸液群が2,248mL(IQR:1,500~3,332)であったのに対し、昇圧薬群は1,140mL(IQR:500~2,120)と少なかった(群間差:-1,108mL、95%CI:-1,395~-850)。
非入院生存日数は両群とも76日
90日時点の非入院生存日数は、昇圧薬群76日(IQR:55~83)、輸液群76日(IQR:55~82)と、両群で同程度であった(群間差:0.0日、95%CI:-2.7~2.7、p=1.00)。90日以内に死亡した患者の非入院生存日数を-1日に設定しても、結果は同様だった。
また、90日時点の死亡率も両群で同程度だった(昇圧薬群16.4%vs.輸液群14.4%、相対リスク:1.14[95%CI:0.85~1.54]、ハザード比:1.17[95%CI:0.85~1.62])。
介入に関連した合併症はほとんど認められなかったが、例外として肺水腫がみられた(昇圧薬群3例[0.6%]vs.輸液群24例[5.0%]、相対リスク:0.12[95%CI:0.03~0.39]、p<0.001)。昇圧薬群の1例に、無症候性高血圧に関連した有害事象が発現した。
著者は、「輸液群の肺水腫は、部分的に、報告バイアスによって引き起こされた可能性がある」としている。
(医学ライター 菅野 守)