AC01は、新規の経口カルシウム感受性強心薬で、グレリン受容体作動薬でもある。本薬は、心筋トロポニンIのリン酸化を低下させるとともに、Ca2+感受性を高めることで心筋の収縮性の向上をもたらすとされる。スウェーデン・カロリンスカ大学病院のLars H. Lund氏らは「GOAL-HF1試験」で、左室駆出率(LVEF)の低下した心不全(HFrEF)患者の治療において、AC01の28日間の投与は安全で良好な忍容性を示し、重篤な有害事象や明らかな心電図上の異常所見は認められなかったと報告した。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2026年6月24日号に掲載された。
欧州4ヵ国の無作為化プラセボ対照第Ib/IIa相試験
GOAL-HF1試験は、欧州4ヵ国(オランダ、英国、スウェーデン、イタリア)の14施設で実施した二重盲検無作為化プラセボ対照第Ib/IIa相試験である(AnaCardioの助成を受けた)。
2023年2月~2025年8月に、年齢18~80歳、6ヵ月以上持続する慢性HFrEF(NYHA心機能分類IIまたはIII)と診断され、駆出率≦40%、安静時平均心拍数55~90拍/分で、ガイドラインに基づく最大耐用量の薬物療法を受け、1次予防として経静脈植込み型除細動器(過度の徐脈から保護するためのバックアップペーシング機能付き)を装着している患者を登録した。
被験者58例(年齢中央値66.0歳[四分位範囲[IQR]:60.3~72.0]、女性5例[9%])を、第Ib相試験(32例)と第IIa相試験(26例)に無作為に割り付けた。
また、第Ib相試験では、AC01の4つの用量コホート(0.1、0.3、1.0、3.0mg)に6例ずつ、プラセボ群に2例ずつを無作為に割り付けた。AC01を1日2回、7日間、経口投与した。第IIa相試験では、AC01の1.0mg群に9例、3.0mg群(1、2日目は1.0mg、3日目以降は3.0mg)に8例、プラセボ群に9例を無作為に割り付け、1日2回、28日間、経口投与した。
主要アウトカムは、安全性および忍容性であった。
AC01関連の重篤な有害事象の発現はない
ベースラインにおいてNYHA心機能分類IIが44例(76%)、IIIが14例(24%)であり、全体の平均駆出率は31.4%(SD 6.3)、NT-proBNP濃度中央値は557pg/mL(IQR:291~882)であった。
AC01関連有害事象は、第Ib相試験で12件、第IIa相試験で18件認められた。AC01関連の重篤な有害事象はみられなかった。第Ib相試験において、プラセボ群の1例に、治療関連の重篤な有害事象が1件(高感度心筋トロポニンI濃度の上昇)発生した。
AC01を投与された41例のうち33例(80%)、プラセボを投与された17例のうち12例(71%)で、軽度または中等度の試験薬投与中に発現した有害事象が報告された。試験からの早期の脱落や死亡に至った有害事象は認められなかった。
最も頻度の高い試験薬投与中に発現した有害事象は、低血圧、非持続性心室性頻拍、呼吸困難、高血糖、めまい、頭痛であった。
明らかな心電図異常の徴候はない
心電図データには、頻拍、新規発症の頻脈性不整脈、心筋虚血、あるいは形態学的異常や伝導異常の明らかな徴候は認められなかった。また、症候性低血圧の報告はなく、高感度心筋トロポニンIやNT-proBNPに対するAC01の明らかな影響もみられなかった。試験期間中の死亡例はなかった。
著者は、「これらの知見は、HFrEF患者における用量選定、長期的な安全性、臨床的有効性を評価するための、より大規模で十分な検出力を持つ試験において、AC01のさらなる評価を行うことを支持するものである」としている。
(医学ライター 菅野 守)