境界性パーソナリティ障害(BPD)は有病率が高いにもかかわらず、承認されている治療薬は依然として存在しない。米国・Boehringer Ingelheim PharmaceuticalsのCarissa White氏らは、BPD治療の課題を特定するため、実臨床におけるBPD患者の治療経過を評価した。BMC Psychiatry誌オンライン版2026年3月20日号の報告。
診断後14日以内(ベースライン)に薬物療法を受けており、12ヵ月以上の治療データを有する、12歳以上、BPDの診断を1回以上受けている患者を対象に、レトロスペクティブ観察コホート研究を行った。患者データは、Holmusk NeuroBluデータベース(ver.21R2)の匿名化されたMindLinc電子健康記録より抽出し、治療経過を分析した。
主な結果は以下のとおり。
・ベースラインで薬物療法を受けていた患者のうち、1,461例(16.1%)が12ヵ月間のフォローアップ調査データを有していた。
・ベースラインで最も頻繁に使用されていた薬剤は抗うつ薬(80.4%)であり、単独または他の薬剤クラスとの併用で使用されていた。
・次いで、第2世代抗精神病薬(SGA)、抗不安薬、気分安定薬が使用されていた。
・ベースライン後12ヵ月間で、最も頻繁に報告された治療経路は、抗うつ薬から別の抗うつ薬への変更であった。
・最も多く使用されていた抗うつ薬はセルトラリン(5.5%)であり、次いでfluoxetine(5%)、citalopram(5%)であった。
・最も多く使用されていた気分安定薬は、ラモトリギン(24.9%)、ガバペンチン(15.4%)、バルプロ酸(7.1%)であった。
・最も多く使用されていたSGAは、クエチアピン(22.1%)、アリピプラゾール(19.0%)であった。
・2種類以上の向精神薬の併用は、ベースラインで83.1%の患者に認められ、フォローアップ期間および年齢とともに増加が認められた。
・本研究の限界として、精神療法に関するデータの欠如、治療アドヒアランスに関する情報がない処方記録の使用が挙げられる。
著者らは、実臨床におけるBPD治療で多剤併用率が83.1%と高かったことに対し、「本結果はBPD治療ガイドラインと完全には合致していない可能性があり、BPD患者は相当な治療負担を抱えている可能性が示唆された」とし、「観察された治療パターンの多様性は、BPDの複雑な症状を反映しており、薬物療法戦略を改善し、患者にとって有意義なアウトカムにつなげるためには、BPDの神経生物学に関する理解を深める必要がある」とまとめている。
(鷹野 敦夫)