境界性パーソナリティ障害(BPD)は、精神科医療において大きな割合を占めており、自殺による死亡率は一般人口と比較して著しく高いことが知られている。フランス・エクス・マルセイユ大学のCyril Gerolymos氏らは、BPD症状に対する薬物療法の有効性と安全性を評価・比較するためシステマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2026年2月10日号の報告。
2024年1月15日~2月12日に、Medline、Web of Science、Google Scholarよりシステマティックに検索した。実薬群とプラセボ群または他剤群を比較したランダム化臨床試験を対象とした。標準化平均差は、ランダム効果ペアワイズ法およびネットワークメタ解析を用いて推定した。薬剤とプラセボの有意差を比較したエビデンスレベルの評価には、GRADE NMAガイダンスを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・2,551例を対象とした35件の試験において、26種類の治療法がプラセボと比較されていた。バイアスリスクは、低い18件、中程度5件、高い12件であった。
・トピラマート(200~250mg/日、8~10週間)、ラモトリギン(50~200mg/日、8週間)、アリピプラゾール(15mg/日、8週間)は、敵意、攻撃性、怒りを最も効果的に軽減し、怒りのコントロールを改善した。
・カルバマゼピン(200~1,200mg/日、6週間)とアセナピン(5~10mg/日、12週間)は、それぞれ衝動性と感情の調節不全を改善した。
・トピラマート、ラモトリギン、アリピプラゾールは、敵意と怒りの軽減について、それぞれ高い、中程度、中程度のエビデンスレベルを示した。
・カルバマゼピンとアセナピンは、衝動性と情緒調節障害に対する有効性について、低いまたはきわめて低いエビデンスレベルを示した。
・一方、アルプラゾラム、メチルフェニデート、ハロペリドール、バルプロ酸は、ランダムに抽出されたBPDサンプルにおいて確実性の低いエビデンスしか得られず、優先されるべきではないことが示された。
著者は、「BPDに対する薬物療法は慎重な臨床評価を行ったうえで、パニック、併存するADHD、一過性の精神病的特徴など、特定の個別化された適応症に限定されるべきであると考えられる」とまとめている。
(鷹野 敦夫)