がん患者4万4,030例を対象とした69件のランダム化比較試験を統合したシステマティックレビューとメタ解析により、ベースライン時の全般的健康状態・QOLスコア、身体機能、役割機能(role functioning)が良好な患者ほど予後が良好であった一方、悪心・嘔吐、疼痛、疲労などの症状が強い患者ほど予後が不良であったことが、カナダ・トロント大学のRyan S. Huang氏らによって明らかになった。JAMA Oncology誌オンライン版2025年9月11日号掲載の報告。
これまで、症状や生活の質などの患者報告アウトカム(Patient-Reported Outcome:PRO)と全生存(OS)との関連は報告されているが、特定のPROドメインが予後予測因子となり得るかどうかは不明であった。そこで研究グループは、がん患者におけるベースライン時のPROとOSとの関連性を評価し、さまざまなPROドメインの予後予測的意義を定量化するために、システマティックレビューとメタ解析を実施した。
PubMed(MEDLINE)、Ovid Embase、Cochrane Libraryを用いて、2000年1月1日~2024年6月1日に公開された研究を検索した。対象となる研究は、18歳以上のがん患者を登録し、ベースライン時に少なくとも1つのPROを測定し、評価項目にOSがあり、臨床的および疾患関連の交絡因子を調整した多変量解析を実施した前向きなランダム化比較試験であった。データは2025年1月15日に分析された。主要評価項目はベースライン時のPROとOSとの関連性で、プールしたハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)で推定した。
主な結果は以下のとおり。
・計69件のランダム化比較試験の4万4,030例がシステマティックレビューに含まれ、そのうち31件(44.9%)がメタ解析の基準を満たした。
・全般的健康状態・QOLスコアの高値はOSの延長と関連していた(HR:0.99、95%CI:0.98~0.99)。
・機能尺度のうち、身体機能(HR:0.94、95%CI:0.92~0.96)および役割機能(HR:0.96、95%CI:0.94~0.98)スコアの高値もOSの延長と関連していた。
・悪心・嘔吐(HR:1.12、95%CI:1.04~1.21)、疼痛(HR:1.07、95%CI:1.04~1.11)、疲労(HR:1.05、95%CI:1.00~1.10)などの症状負担が強いほどOSは不良であった。
・個々の症状の重症度が高いほど死亡リスクが高くなることが示された(HR:1.03、95%CI:1.01~1.04)。
これらの結果より、研究グループは「これらの知見は、治療の意思決定とリスクの層別化にPROの評価を取り入れることを支持するものである」とまとめた。
(ケアネット 森)