周術期心停止で緊急手術と待機的手術では差異があるか/浜松医科大

提供元:ケアネット

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公開日:2025/08/11

 

 周術期の心停止は緊急手術でより頻度が多く、死亡リスクを伴うが、その発生率、原因、および転帰を調査した大規模な研究は不足している。そこで、このテーマについて浜松医科大学医学部附属病院集中治療部の姉崎 大樹氏らの研究チームは、全国のICUデータを基にわが国の緊急手術と待機的手術における周術期心停止の疫学を調査した。その結果、緊急手術では待機的手術と比較し、周術期心停止の発生率が高いことが判明した。この結果は、British Journal of Anaesthesia誌オンライン版2025年7月24日号に公開された。

緊急手術と待機的手術で異なる周術期心停止の発生率、手術手技

 研究グループは、日本集中治療患者データベース(JIPAD)という全国的なICU登録データベースを用い、2015年4月~2023年3月までの間に手術室からICU入院前に心停止を経験した患者を対象に調査を行った。患者は、緊急手術と待機的手術に分類され、発生率、手術手技、原因、臨床転帰に関する群間比較を行う多施設共同後ろ向きコホート研究を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・手術関連ICU入院患者21万4,303例中874例(0.41%)で周術期心停止が発生した。内訳は、緊急手術が3万2,408例中563例(1.74%)、待機的手術が18万1,895例中311例(0.17%)だった。
・心停止が最も多く発生した手術手技は、緊急手術群では急性大動脈解離手術で90例(16.0%)、待機的手術群では消化管腫瘍切除術で39例(12.5%)だった。
・心停止の主な原因は、緊急手術群では急性大動脈症候群で176例(31.3%)であり、待機的手術群では弁膜症48例(15.4%)と急性冠症候群42例(13.5%)だった。
・緊急手術群では、院内死亡率(46.2%vs.15.8%)および他の医療施設への転院率(28.8%vs.14.8%)が有意に高かった。

 以上の結果から研究グループは、「全国調査により緊急手術と待機的手術における周術期心停止の発生率、手術手技、病因、臨床転帰に有意な差があることが明らかになった」と結論付けている。

(ケアネット 稲川 進)