コーヒー、紅茶、エナジードリンクなどに含まれるカフェインは、世界で最も多く消費されている精神活性物質であり、世界人口の約80%は毎日摂取している。近年の研究では、カフェイン摂取後に生じる可能性のあるメンタルヘルスのアウトカムへの影響に関して、より複雑な関係性が示唆されている。シンガポール国立大学のChen Ee Low氏らは、カフェイン摂取が自殺企図、自殺念慮、自傷行為リスクに及ぼす影響を調査するため、初のシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Nutrients誌2025年6月2日号の報告。
PRISMAに準拠し、カフェイン摂取が自殺企図、自殺念慮、自傷行為リスクに及ぼす影響を評価したすべての研究を、PubMed、Embase、Cochrane、PsycINFOよりシステマティックに検索した。主要解析には、ランダム効果メタ解析およびメタ回帰分析を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・17件の研究をメタ解析に含めた。
・1ヵ月当たり60杯以上のコーヒー摂取は、自殺企図リスク低下と関連していることが示唆された。
・対照的に、1ヵ月当たりたった1杯のエナジードリンク摂取で、自殺企図および自殺念慮リスクの有意な増加が認められた。
・メタ回帰分析では、カフェイン摂取量と自殺傾向との間に強い関連性が示唆された。
・システマティックレビューでは、男性および薬物使用がカフェイン摂取量を有意に増加させることが示された。
著者らは「コーヒー摂取は、自殺念慮および自殺企図リスク低下と関連していたが、エナジードリンクは、いずれの有害リスク増加とも関連していた。この関連性の根底にある心理社会的要因や原因を明らかにするためにも、さらなる研究が不可欠である。カフェイン摂取とメンタルヘルスとの関連を理解することは、公衆衛生戦略を策定するうえで、非常に重要である」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)