HER2+乳がん術前療法、THP vs.TCHP(neoCARHP)/ASCO2025

提供元:ケアネット

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公開日:2025/06/11

 

 HER2+の早期乳がんの術前療法として、タキサン系薬+トラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法(THP)と、カルボプラチンを追加したタキサン系薬+カルボプラチン+トラスツズマブ+ペルツズマブ併用療法(TCHP)の有効性と安全性を比較した第III相neoCARHP試験の結果、THPはTCHPと比較して病理学的完全奏効(pCR)率が非劣性かつ忍容性は良好であり、de-escalationの術前療法は有望な治療戦略となりうることを、中国・Guangdong Provincial People’s HospitalのKun Wang氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2025 ASCO Annual Meeting)で発表した。

 neoCARHP試験の対象は、18歳以上で、未治療のStageII~IIIの浸潤性のHER2+乳がん患者であった。リンパ節転移およびホルモン受容体の状態によって層別化し、医師が選択したタキサン系薬(ドセタキセル、パクリタキセル、nab-パクリタキセル)+トラスツズマブ+ペルツズマブにカルボプラチンを併用する群(TCHP群)または併用しない群(THP群)に1:1に無作為に割り付け、3週間ごとに6サイクル投与した。

 主要評価項目は、乳房および腋窩におけるpCR率(ypT0/is ypN0)であり、修正ITT集団(無作為化されて少なくとも1回投与された患者全員)で評価した。事前に規定された非劣性マージンは-10%であった。

 主な結果は以下のとおり。

・THP群は382例、TCHP群は384例であった。年齢中央値は52歳および51歳、T1~2が81.4%および78.6%、リンパ節転移ありが64.1%および64.1%、StageIIが77.0%および71.6%であった。
・主要評価項目であるpCR率は、THP群64.1%、TCHP群65.9%であった。絶対差は-1.8%ポイント(95%信頼区間[CI]:-8.5~5.0)であり、THPはTCHPと比較して非劣性であった(p=0.0089)。
・ER-およびPR-の集団におけるpCR率は、THP群78.2%、TCHP群77.8%であった(絶対差:0.4%ポイント、95%CI:-9.2~10.0)。ER+および/またはPR+の集団では55.8%および58.8%であった(-3.0%ポイント、-11.7~5.9)。
・全奏効率は、THP群91.9%(95%CI:88.7~94.2)、TCHP群94.8%(92.1~96.6)であった。
・THP群では、TCHP群と比較して、Grade3/4の有害事象および重篤な有害事象は少なかった。治療関連死は認めなかった。

 これらの結果より、Wang氏は「HER2+の早期乳がん患者が抗HER2薬を2剤用いる場合、カルボプラチンを省略することは有効なde-escalationの術前療法となりうる」とまとめた。

(ケアネット 森)