第III相PADA-1試験では、ホルモン受容体陽性(HR+)/HER2陰性(HER2-)進行乳がんに対する1次治療としてアロマターゼ阻害薬とパルボシクリブの併用療法を受けた患者のうち、疾患進行前に血液中で検出されたESR1変異を有する患者において、フルベストラントとパルボシクリブ併用療法への早期切り替えの臨床的有用性が示されている。フランス・キュリー研究所のFrancois Clement Bidard氏は、欧州臨床腫瘍学会乳がん(ESMO Breast Cancer 2025、5月15~17日)で同試験の2次解析結果を発表し、血中ESR1変異累積発現率は約40%で、その検出時期は一様でなく、治療開始後6ヵ月以内の検出例は少数であり、3年以降は減少することが確認された。
本研究では、アロマターゼ阻害薬とパルボシクリブの併用による1次治療中の、転移を有するHR+/HER2-乳がん患者1,017例が対象とされた。組み入れ時、1ヵ月後、その後2ヵ月後おきにリキッドバイオプシーで採取した血中循環腫瘍DNA(ctDNA)からdroplet digital PCR(ddPCR)を用いてESR1変異の状況がモニタリングされ、以下の2群に分類された:
・疾患進行が認められたが血中ESR1変異を認めなかった395例
・画像診断による病勢進行の有無にかかわらず血中ESR1変異上昇が認められた283例
ESR1変異発現の関連因子を評価するために、2項ロジスティック回帰分析を用いた。
主な結果は以下のとおり。
・PADA-1試験における血中ESR1変異の累積発現率は、評価可能な患者の41.7%であった。
・血中ESR1変異の検出には経時的なばらつきがあり、アロマターゼ阻害薬とパルボシクリブの投与開始後6ヵ月間はほとんど検出されず、また投与開始後3年経過すると発現率は減少した。
・以下のベースライン因子は、疾患進行が認められたが血中ESR1変異を認めなかった症例との比較において、血中ESR1変異上昇と独立して関連が認められた:
骨転移あり(骨転移のみのオッズ比[OR]:2.7[95%信頼区間:1.5~4.8]、骨転移+他臓器転移のOR:2.1[1.3~3.4])
エストロゲン受容体発現の高さ([10%増加ごとに]OR:1.1[1.01~1.3])
年齢の若さ([10歳若いごとに]OR:1.3[1.1~1.45])
LDH高値(OR:1.6[1.1~2.3])
(ケアネット 遊佐 なつみ)