若年性認知症リスクとMetSとの関連

提供元:ケアネット

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公開日:2025/05/23

 

 若年性認知症は、社会および医療において大きな負担となっている。メタボリックシンドローム(MetS)は、晩年の認知症の一因であると考えられているが、若年性認知症への影響はよくわかっていない。韓国・Soonchunhyang University Seoul HospitalのJeong-Yoon Lee氏らは、MetSおよびその構成要素が、すべての原因による認知症、アルツハイマー病、血管性認知症を含む若年性認知症リスクを上昇させるかを明らかにするため、本研究を実施した。Neurology誌2025年5月27日号の報告。

 The Korean National Insurance Serviceのデータを用いて、全国規模の人口ベースコホート研究を実施した。2009年に国民健康診断を受けた40〜60歳を対象に、2020年12月31日または65歳までのいずれか早いほうまでフォローアップ調査を行った。MetSは、ウエスト周囲径、血圧、空腹時血糖値、トリグリセライド値、HDLコレステロールの測定値を含む、確立されたガイドラインに従って定義した。共変量には、年齢、性別、所得水準、喫煙状況、飲酒量および高血圧、糖尿病、脂質異常症、うつ病などの併存疾患を含めた。主要アウトカムは、65歳未満での認知症診断で定義したすべての原因による若年性認知症の発症率とし、副次的アウトカムに若年性アルツハイマー病、若年性脳血管性認知症を含めた。ハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の推定には、多変量Cox比例ハザードモデルを用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・対象者数は197万9,509人(平均年齢:49.0歳、男性の割合:51.3%、MetS罹患率:50.7%)。
・平均フォローアップ期間7.75年の間に、若年性認知症を発症したのは8.921例(0.45%)であった。
・MetSは、すべての原因による若年性認知症リスク24%上昇(調整HR:1.24、95%CI:1.19〜1.30)、若年性アルツハイマー病リスク12.4%上昇(HR:1.12、95%CI:1.03〜1.22)、若年性脳血管性認知症リスク20.9%上昇(HR:1.21、95%CI:1.08〜1.35)との関連が認められた。
・有意な交互作用が認められた因子は、より若年(40〜49歳vs.50〜59歳)、女性、飲酒状況、肥満、うつ病であった。

 著者らは「MetSおよびその構成要素は、若年性認知症リスク上昇と有意な関連を示した。これらの知見は、MetSに対する介入が、若年性認知症リスクの軽減につながることを示唆している。しかし、本研究は観察研究のため、明確な因果関係の推定は困難であり、請求データへの依存は、誤分類バイアスに影響する可能性がある。今後の縦断的研究や包括的なデータ収集により、これらの関連性を検証し、さらに発展させることが望まれる」と結論付けている。

(鷹野 敦夫)