日本における治療抵抗性うつ病患者と医師の重要視しているポイントの違い

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2025/05/20

 

 福岡大学の堀 輝氏らは、抗うつ薬治療で効果不十分な日本人うつ病患者の臨床成績に対する医師と患者が重視するポイントの違いを、臨床的に意義のある最小差(MCID)の概念を適用して調査した。Frontiers in Psychiatry誌2025年3月26日号の報告。

 本研究は、うつ病患者に対するブレクスピプラゾール2mg/日の増強療法を評価した52週間の非盲検多施設共同研究の事後分析として実施された。Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)スコア、シーハン障害尺度(SDS)スコア、EuroQol-5 dimension-5 level (EQ-5D-5L)から導き出された効用スコアにおけるMCIDを決定した。医師と患者の回答におけるMADRS、SDS、効用スコアの曲線下面積(AUC)との相関係数を比較した。

 主な結果は以下のとおり。

・患者のMCIDは、MADRSスコアで4.89〜4.94、MADRS改善率で31.15〜35.10%、SDSスコアで0.69〜2.14、効用スコアで0.045〜0.195であった。
・患者視点アンカーから導き出されたSDSおよび効用スコアのMCIDは、医師視点アンカーから導き出されたMCIDの約2倍であった。
・患者視点アンカーでは、効用スコアのAUCとの相関係数が最も高く、医師視点アンカーではMADRSスコアが最も高かった。

 著者らは「MADRS、SDS、EQ-5D-5Lから導き出された効用スコアのMCIDが推定された。医師は、抑うつ症状に重点を置き、日常生活機能や活動性の改善よりも症状の重症度を優先する傾向があるのに対し、患者は、日常生活機能や活動性の改善を優先する傾向が示唆された」と結論付けている。

(鷹野 敦夫)