双極症とADHD併発患者における認知機能/心理社会的機能の特徴

提供元:ケアネット

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公開日:2025/04/08

 

 双極症や注意欠如多動症(ADHD)は、神経認知および心理社会的機能に重大な影響を及ぼす慢性的な神経精神疾患である。双極症とADHDの併発は、特有の臨床的課題を呈し、認知機能および機能障害をさらに悪化させる可能性がある。スペイン・Vall d'Hebron Research InstituteのSilvia Amoretti氏らは、双極症またはADHD患者および併発した患者と健康対照者における神経認知機能および心理社会的機能の違いを明らかにするため、最新情報を統合したシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。Neuroscience and Biobehavioral Reviews誌2025年4月号の報告。

 主な内容は以下のとおり。

・包括的な検索により特定された5,639研究のうち、システマティックレビューの包括基準を満たした研究は34件、メタ解析の包括基準を満たした研究は31件。
・双極症/ADHD併発患者と双極症患者では、評価された認知機能のいずれにおいても有意な差は認められなかった。
・双極症/ADHD併発患者は、ADHD患者と比較し、視覚記憶の有意な低下が認められた(標準化平均差[SMD]:−0.29、95%信頼区間[CI]:−0.53〜−0.04、p=0.022)。
・双極症/ADHD併発患者は、健康対照者と比較し、さまざまな認知機能の低下が認められた。
【処理速度】SMD:−0.54、95%CI:−0.86〜−0.22、p<0.001
【持続性注意】SMD:−0.40、95%CI:−0.62〜−0.19、p<0.001
【視覚記憶】SMD:−0.47、95%CI:−0.69〜−0.26、p<0.001
【作業記憶】SMD:−0.79、95%CI:−1.13〜−0.44、p<0.001
【認知的柔軟性および高次実行機能】SMD:−0.52、95%CI:−0.84〜−0.20、p=0.001
【言語記憶】SMD:−0.95、95%CI:−1.43〜−0.47、p<0.001
・双極症/ADHD併発患者の心理社会的機能は、双極症患者(SMD:−0.46、p<0.001)、ADHD患者(SMD:−1.00、p<0.001)、健康対照者(SMD:−3.54、p<0.001)よりも有意に不良であった。

 著者らは「双極症とADHDの併発は、重大な神経認知機能および心理社会的機能の悪化と関連している可能性が示唆された。本結果は、これらの併存疾患特有の課題に対処するための介入の必要性を示唆しており、臨床実践や将来の研究に役立つであろう」としている。

(鷹野 敦夫)