閉塞性肥大型心筋症へのmavacamten、長期有効性・安全性の中間解析(HORIZON-HCM)/日本循環器学会

提供元:ケアネット

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公開日:2025/04/02

 

 閉塞性肥大型心筋症(HCM)治療薬の選択的心筋ミオシン阻害薬mavacamten は、3月27日にブリストル マイヤーズ スクイブが製造販売承認を取得し、年内の国内販売が見込まれる。今回、泉 知里氏(国立循環器病研究センター 心不全・移植部門 部門長)が、mavacamtenの54週での有効性・安全性・忍容性について、3月28~30日に開催された第89回日本循環器学会学術集会のLate Breaking Clinical Trials1で報告した。

 日本人における症状を有する閉塞性HCM患者の治療効果検証のため、第III相非盲検単群試験HORIZON-HCMが実施されており、昨年の同学会において北岡 裕章氏(高知大学医学部老年病・循環器内科学 教授)が30週の短期有効性・安全性を報告している。今回の報告では、108週の長期試験の中間解析として54週時点の効果が示された。

 本研究は、NYHA心機能分類II/III、左室駆出率(LVEF)≧60%、安静時または誘発時の左室流出路(LVOT)最大圧較差≧50mmHgの日本人成人38例を対象に、54週時点の評価を行ったもの。評価項目は、安静時およびバルサルバ法によるLVOT圧較差、カンザスシティ心筋症質問票臨床サマリースコア(KCCQ-CSS)、心臓バイオマーカー(NT-proBNP、心筋トロポニンI[cTnI]、心筋トロポニンT[nTnT])、NYHA心機能分類、安全性のベースラインからの変化であった。主な除外基準は、スクリーニング前6ヵ月以内の侵襲的中隔縮小治療(外科的筋切除術または経皮的alcohol septal ablation[ASA])の既往あるいは予定を有する、閉塞性HCMに似た心肥大を引き起こす既知の浸潤性または蓄積性障害の有無など。開始用量は1日1回2.5mg経口投与で、LVOT最大圧較差およびLVEFのエコー評価に基づき、6週目、8週目、14週目、20週目と個別用量調整が行われた。

 主な結果は以下のとおり。

・対象者38例の平均年齢は65歳で、66%は女性であった。患者の約90%はベースラインでβ遮断薬による治療を受けており、21%はCYP2C19の代謝活性が低かった。また、13%はNYHA心機能分類IIIの症状を有し、NT-proBNPの中央値は1,029pg/mLであった。今回、全38例のうち、54週の投与が可能であった36例を解析した。
・ベースラインで73.6mmHgおよび91.4mmHgであった安静時およびバルサルバLVOT圧較差の平均は、mavacamten投与後減少し、54週まで持続した。
・ベースラインの平均LVEFは78%で、54週目までに7.9%減少したが、どの計測タイミングでも70%を下回っていなかった。
・KCCQスコアは治療開始後6週間以内に急速な改善がみられ、54週目まで持続した。
・NYHA心機能分類は、25例がベースラインから54週までに1以上改善した。
・NT-proBNPの急速な低下がベースラインから6週までにみられ、NT-proBNPは6週から30週にかけて改善が続き、54週目まで持続した。この傾向はcTnIとcTnTでもみられた。
・54週までの長期試験期間中の安全性について、心血管関連の有害事象は報告されなかった。6例が54週間の治療中に重篤な有害事象を経験したが、いずれもmavacamtenに関連するものではなかった。また、13例はmavacamtenが中断され、そのうち10例ではプロトコルで定義された基準により治療が中断された。その主な理由は、mavacamtenの血漿濃度が高かったことが原因とされた。

 本結果から泉氏は「日本人の患者集団において、mavacamtenは54週間にわたりLVOT圧較差の持続的な改善と心臓バイオマーカーの減少をもたらし、NYHA心機能分類およびKCCQスコアの改善にもつながった。mavacamtenは忍容性が高く、54週間を通じて新たな安全性シグナルや安全性に関する懸念は確認されず、全体として54週目に観察された安全性および有効性の結果は、30週のデータと一致している」とコメントした。

 なお、世界でのmavacamtenの状況として、MAVA-Long-Term Extension試験(NCT03723655)において、最長3.5年(180週)に及ぶ継続治療の安全性・有効性が2024年9月に示されている。

(ケアネット 土井 舞子)

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HORIZON-HCM試験(jRCT)