症候性閉塞性肥大型心筋症へのaficamten、酸素摂取量や身体機能が改善/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2024/05/24

 

 症候性閉塞性肥大型心筋症(HCM)患者において、経口選択的心筋ミオシン阻害薬aficamtenはプラセボと比較し最大酸素摂取量を有意に改善させたことが示された。米国・Lahey Hospital and Medical CenterのMartin S. Maron氏らSEQUOIA-HCM Investigatorsが、14ヵ国101施設で実施された無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「SEQUOIA-HCM試験」の結果を報告した。閉塞性HCM患者における運動耐容能低下や症状の主な原因の1つは、左室流出路(LVOT)閉塞による心内圧の上昇である。aficamtenは、心筋の過剰収縮を軽減することによってLVOT圧較差を減少させることが示唆されていた。NEJM誌オンライン版2024年5月13日号掲載の報告。

aficamten vs.プラセボ、主要エンドポイントは最大酸素摂取量

 研究グループは、HCMと確定診断された、スクリーニング時の左室駆出率が60%以上、LVOT圧較差が安静時30mmHg以上、バルサルバ負荷時50mmHg以上、NYHA機能分類IIまたはIII度、推定最大酸素摂取量(pVO2)が90%以下の患者(18~85歳)を、β遮断薬の使用の有無および心肺運動負荷試験の方法(トレッドミルまたは自転車エルゴメーター)で層別化し、aficamten群またはプラセボ群に無作為に割り付け、1日1回24週間経口投与した。投与量は1回5mgから開始し、心エコー検査の結果に基づき2週目、4週目および6週目に5mgずつ増量可とし、最大用量は20mgであった。

 主要エンドポイントは、心肺運動負荷試験で評価したpVO2のベースラインから24週時までの変化とした。また、副次エンドポイントは、カンザスシティ心筋症質問票の臨床サマリースコア(KCCQ-CSS:0~100で数値が高いほど症状と身体的制限が少ない)のベースラインから24週時までの変化、24週時のNYHA機能分類のベースラインから1以上の改善、バルサルバ負荷時LVOT圧較差のベースラインから24週時までの変化、24週時のバルサルバ負荷時LVOT圧較差が30mmHg未満の割合、中隔縮小治療の対象となる日数などの10項目で、階層的に検定を行うことが事前に規定された。

24週時のpVO2の変化、1.8mL/kg/分vs.0.0mL/kg/分

 2022年2月1日~2023年5月15日に計543例がスクリーニングを受け、うち282例が無作為化された(aficamten群142例、プラセボ群140例)。平均年齢は59.1歳、男性が59.2%、ベースラインの平均LVOT圧較差は55.1mmHg、平均左室駆出率は74.8%であった。

 主要エンドポイントであるpVO2のベースラインから24週時までの変化は、aficamten群1.8mL/kg/分(95%信頼区間[CI]:1.2~2.3)、プラセボ群0.0mL/kg/分(-0.5~0.5)であった(最小二乗平均値の群間差:1.7mL/kg/分[95%CI:1.0~2.4]、p<0.001)。

 副次エンドポイントは、10項目すべてでプラセボ群と比較してaficamten群の有意な改善が示された。

 重篤な有害事象は、aficamten群で8例(5.6%)、プラセボ群で13例(9.3%)に認められた。有害事象の発現率はそれぞれ73.9%および70.7%であり、両群で同程度であった。

 なお、著者は、治療期間が比較的短期間であり、長期的な心血管アウトカムについては評価できないことなどを研究の限界として挙げている。

(医学ライター 吉尾 幸恵)