治療抵抗性うつ病に対する新たな治療薬、今後の展望は

提供元:ケアネット

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公開日:2025/04/01

 

 うつ病の初期治療に対する治療反応不良は、患者に深刻な悪影響を及ぼす臨床的課題の1つである。しかし、治療抵抗性うつ病に対して承認された治療法は、ほとんどない。米国・エモリー大学のMichael J. Lucido氏らは、治療抵抗性うつ病に対して実施されている臨床試験を特定し、レビューを行った。Brain Sciences誌2025年2月6日号の報告。

 米国および欧州の臨床試験レジストリをシステマティックに検索し、2020年1月以降に最終更新された治療抵抗性うつ病に対する治療薬を評価した第II〜IV相試験を特定した。検索キーワードには、「治療抵抗性うつ病」および関連する下位レベルの用語(レジストリ検索プロトコールに基づく)を用いた。米国のレジストリでは、「うつ病性障害」および「不十分」のワードを用いて2次検索も実施し、治療抵抗性うつ病としてタグ付けされていない研究も収集した。さらに、治験薬のトランス診断ターゲットとして「自殺」および「アンヘドニア」のワードを用いて、さらに2回の検索を実施した。治験薬の主な作用機序に基づき分類を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・臨床試験の件数は、治療抵抗性うつ病で50件、アンヘドニアで20件、自殺で25件が特定された。
・グルタミン酸システムの調節は、現在最も多くの化合物が開発されているメカニズムであった。
・これには、NMDA受容体、AMPA受容体、代謝型2/3グルタミン酸受容体の拮抗薬およびアロステリック調整薬やグルタミン酸シグナル伝達の下流にある細胞内エフェクター分子が含まれた。
・しかし、メカニズムターゲットの中で過去5年間、最も急増した治験薬は幻覚薬であり、とくにpsilocybinが大きく注目されていた。
・その他のメカニズムには、GABA受容体調節薬、モノアミン調節薬、抗炎症/免疫調節薬、オレキシン2受容体拮抗薬が含まれた。

 著者らは「治療抵抗性うつ病に対するより効果的で潜在的に個別化された薬物療法の開発には、大きな期待をもたらす。治療抵抗性うつ病における有効性を検出する際の課題には、根底にあると推察されるさまざまな生物学的機能障害、併存疾患、慢性的な心理社会的ストレス要因、および以前のセロトニン作動性抗うつ薬治療による持続的な影響、集団内の異質性が含まれる」と結論付けている。

(鷹野 敦夫)