胸腺がん(TC)は、年間0.15例/10万人とされる胸腺上皮性腫瘍の15%と、非常にまれな疾患である。進行TCの1次治療は、カルボプラチン+パクリタキセルなどのプラチナ併用化学療法である。しかし、奏効割合(ORR)は30%、無増悪生存期間(PFS)の中央値は約5.0~7.6ヵ月である。既治療の進行TCに対する免疫チェックポイント阻害薬(ICI)単剤の試験でもORRは0〜22.5%に留まる。一方、ICI+化学療法の有効性を検討した試験はない。そのような中、順天堂大学の宿谷 威仁氏らは未治療の進行TCに対するICI+化学療法の国内15施設によるオープンラベル単群第II相試験を行った。
・対象:未治療の切除不能再発進行(III、IVA、IVB期)TC
・介入:アテゾリズマブ(1,200mg)+カルボプラチン(AUC6)+パクリタキセル(200mg/m2)3週ごと4〜6サイクル→アテゾリズマブ(1,200mg)3週ごと忍容できない有害事象の発現または進行(PD)まで
・評価項目
[主要評価項目]独立中央判定(ICR)評価のORR
[副次評価項目]試験担当医評価のORR、全生存期間(OS)、PFS、病勢コントロール率(DCR)、奏効期間(DOR)、安全性など
主な結果は以下のとおり
・2022年6月14日〜2023年7月6日に48例が登録され、有効性および安全性の分析対象となった。
・患者の年齢中央値は67.5歳で、全員アジア人であった。
・追跡期間中央値15.3ヵ月でのORRは56%であった。
・頻度の高いGrade3以上の有害事象は好中球減少症(56%)、白血球減少症(33%)、発熱性好中球減少症(23%)、斑状丘疹状発疹(13%)であった。治療関連死亡はなかった。
進行再発胸腺がんは予後不良であるにもかかわらず、希少性により、新たな薬物療法の開発と導入が遅れている。アテゾリズマブ+カルボプラチン+パクリタキセルは、未治療の進行または再発胸腺がんに対する実施可能な治療選択肢となる可能性がある。
(ケアネット 細田 雅之)