前治療歴のある切除不能な局所進行または転移を有するHER2+乳がん患者に対し、トラスツズマブとカペシタビンに加えて経口チロシンキナーゼ阻害薬tucatinibを追加投与した第II相HER2CLIMB-03試験の結果、日本人集団においても良好な有効性と安全性を示したことを、大阪国際がんセンターの中山 貴寛氏が22回日本臨床腫瘍学会学術集会(JSMO2025)で発表した。
グローバルなHER2CLIMB試験において、複数の前治療歴があり、局所進行/転移を有するHER2+乳がん患者に対するトラスツズマブ+カペシタビン+tucatinib併用療法は、臨床的に有意な有効性を示し、忍容性も良好であったことが報告されている。今回は、主に日本から患者を登録したHER2CLIMB-03試験の有効性と安全性が報告された。
・試験デザイン:第II相単群試験
・対象:タキサン、トラスツズマブ、ペルツズマブ、T-DM1による治療後に病勢進行が認められた局所進行/転移を有するHER2+乳がん患者(ECOG PS 0/1)
・スケジュール:tucatinib(1日2回300mg、経口投与)+トラスツズマブ(21日ごとに6mg/kg[1サイクル目の1日目は8mg/kg]、静脈内投与)+カペシタビン(21日ごとの1~14日まで1日2回1,000mg/m2、経口投与)
・評価項目:
[主要評価項目]日本人集団における独立中央判定(ICR)による確定奏効率(cORR)
[副次評価項目]全体集団におけるICRによるcORR、奏効期間(DOR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、安全性
・データカットオフ:2023年7月17日
主な結果は以下のとおり。
・合計66例(日本53例、韓国10例、台湾3例)が1サイクル以上の治療を受けた。全例が女性で、年齢中央値は53歳(範囲:31~84)、ECOG PS 0は77%、HR+は42.4%、HR-は48.5%、Stage IVは47.0%、内臓疾患を有したのは63.6%、転移に対する前治療ライン数中央値は3であった。
・データカットオフ時に評価可能であった日本人集団(48例)のcORR率は35.4%(90%信頼区間[CI]:24.0~48.3)、全体集団(60例)では40.0%(29.3~51.4)であった。
・DOR中央値は、日本人集団8.3カ月(90%CI:6.2~8.5)、全体集団8.5ヵ月(6.2~12.4)であった。
・PFS中央値は、日本人集団7.4カ月(90%CI:5.3~7.6)、全体集団6.4ヵ月(5.3~7.5)であった。
・12ヵ月OS率は、日本人集団80.2%、全体集団82.5%であった。
・試験治療下における有害事象(TEAE)は全例で認められた(投与期間中央値7.6ヵ月)。Grade≧3のTEAEは日本人集団49.1%および全体集団43.9%に発現し、重篤なTEAEは11.3%および9.1%に発現した。Grade≧3のTEAEで多かったのは、ALT増加(15.2%)、好中球数減少(10.6%)、AST増加(9.1%)、貧血(7.6%)であった。
これらの結果より、中山氏は「トラスツズマブとカペシタビンへのtucatinib追加は、前治療歴があり、局所進行/転移を有するHER2+乳がんの日本人、韓国人、台湾人の集団において良好な有効性と安全性を示した。HER2CLIMB-03試験の結果はグローバルなHER2CLIMB試験と一貫したものであり、tucatinib+トラスツズマブ+カペシタビンはアジア人においても今後の治療選択肢として支持されるものである」とまとめた。
(ケアネット 森)