医学生/初期研修医時代に戻れるなら「直美」に進みたい?/医師1,000人アンケート

提供元:ケアネット

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公開日:2025/03/21

 

 初期研修を終えてすぐ、保険診療を経験せずに自由診療である美容医療業界に直接進む「直美(ちょくび)」の医師が増えている。診療科の医師偏在や医局の人材獲得が課題となっているなか、保険診療の医師は「直美」をどのように考えているのかを調査するため、CareNet.comでは会員医師1,024人を対象に「直美」に関するアンケートを行った(実施:2025年2月12日)。

年代が上がるほど問題と考える医師が多い

 Q1では、「直美」の増加を日本の医療における問題と考えているかどうかを聞いた(単一回答)。全体では、「非常に問題と考えている」が35.4%、「どちらかというと問題と考えている」が43.2%、「どちらかというと問題とは考えていない」が13.9%、「まったく問題とは考えていない」が7.5%であり、大多数の医師は問題と捉えていた。

 年代別の「非常に/どちらかというと問題と考えている」および「どちらかというと/まったく問題とは考えていない」の割合は、20代が75.7%vs.24.4%、30代が78.4%vs.21.5%、40代が78.6%vs.21.4%、50代が80.3%vs.19.7%、60代以上が80.0%vs.20.0%であり、年代が上がるほどおおむね問題と捉える医師が多い傾向にあった。

医療界の最大の課題は「給与が低い」

 Q2では、「直美」の増加の背景にある医療界の課題としてとくに大きいものを選択式(3つまで)で聞いた。全体では「給与が低い」が最も多く、「労働時間が長い」「休みが取れない」「診療報酬制度の限界」「業務量が多い」「責任が重い」などと続いた。

 若手医師では「給与が低い」「労働時間が長い」「休みが取れない」がとくに多かったが、ベテラン医師では「診療報酬制度の限界」「業務量が多い」「責任が重い」という回答も多くばらつきがみられた。なお、50代と60代以上では若手医師よりも「キャリア形成や人間関係が大変」の回答が目立ち、これまでのご苦労がうかがえた。

若い世代ほど「直美に進みたい」が多い

 Q3では、もし医学生/初期研修医時代に戻れるなら「直美」に進みたいと思うかどうかを聞いた(単一回答)。全体では、「進みたい」が10.8%、「進みたくない」が89.2%と大差がついた。

 年代別では、20代が18.4%vs.81.6%、30代が13.2%vs.86.8%、40代が10.7%vs.89.3%、50代が5.3%vs.94.7%、60代以上が6.8%vs.93.2%であり、Q1と同様に年代が上がるほど「直美」を懸念していることが示唆された。

給料の良さvs.お金のためではない

 Q4.では上記Q3の理由をフリーコメントで聞いた。「直美」に進みたい派の意見で多かったのはやはり給料の良さなど圧倒的にお金に関するものであったが、進みたくない派の意見としても「医師を志したのはお金のためではない」「金銭だけではない」などお金への言及が多く、直美=高給という認識が根底にあることが浮き彫りになった。そのほかの進みたくない派の意見は、「理想とする医師像ではない」「患者さんの命を救いたい」「命に関わる診療科で働きたい」「国公立大学だったので多くの税金を使って医師にさせてもらったのに、その技術・知識をあまり社会に還元できない」など志の高いコメントが寄せられたほか、「美容医療の道に進むとしても、ある程度医療スキルを磨いてからのほうがよい」「研修医のときの知識だけでは不十分だと思う」など知識・経験不足を危惧するコメントや、「美容関係はレッドオーシャンで続けるのは難しい」「その先のキャリア形成が難しい」など美容業界に対する懸念も寄せられた。


 Q5ではフリーコメントとして、「直美」に対するご意見やご感想、保険診療でこそ得られたご経験、若手医師へのアドバイスなどを聞いた。

「直美」や美容業界に関するご意見(抜粋)
・自分の好きな道に本気で取り組むことが一番大事。
・直美だろうと保険診療だろうと、真剣に極めようと思うくらい頑張れば問題ないと思う。
・美容に進むのはある程度皮膚科、形成外科領域を専門で研修してからに限るのがよいのではないか。
・まずは基本的修練を積むべきで、形成外科的能力がないとリスク評価すら難しい。
・自分がやりたいことに進むのが一番と思うが、若い時期、研修期間しか得られないことも多いのでいろいろ経験してから選択していくこともよいと思う。
・美容に関する法改正や需要減などリスクも抱えていることを承知の上であれば問題ない。
・直美を選択したら保険診療の医師に変更するのはかなり労力が必要と思う。
・最初に苦労するのはどの仕事も同じ。まずは医師という仕事の奥深さを一度は知ってから将来を考えてもよい。
・中高生の学習塾で成績の良い子には医学部受験を勧めて、塾の実績とするような社会状況も、動機付けがなされていない医学生を増やしている一因ではないかと思う。
・美容外科でのトラブルの治療のために受診する人も多く、美容外科で最後まで責任を取って診るべき。
・保険診療以外で生じた医療事故については保険制度を利用しないで対応してほしい。

保険診療、制度に関するご意見(抜粋)
・若いうちは専門の診療科について経験を積んだほうよいと思う。
・ひとまずどんな患者でも診察できるというのは意外に大きい。
・ある程度の臨床経験が医師としても人間としても成長させてくれると思う。
・どの職種も修行している間は給与が低い。学びながら高給取りなんてありえない。卒後10年は給与低くても当然。卒後一桁は何もできないに等しい。
・専門医取得までは低賃金、長時間労働、休日返上が必要となるが、取得したら見える景色が変わる。
・人命救助の経験は代え難い。
・保険診療点数の低さがそもそもの根源と思う。
・直美が悪いのでなく、直美を選ぶ人が増えるくらい保険診療の先行きが暗いことが問題と感じる。
・報酬と働き方を変えない限り、保険診療に従事する若手は少なくなる一方だと考える。
・行きたければ自由にどうぞとは思うが、国の政策としてなんらかのペナルティーをもうけるべき。
・地域枠の医師の直美が存在する件に関しては、約束が守れていないのではないかと考える。
・美容外科は自由診療なので、医師の資格とは別の資格を創設すべき。


アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中。
「直美」の増加の背景にある医療界の課題は?/医師1,000人アンケート

(ケアネット 森)